【懐かしの名盤】ポリス『Synchronicity / シンクロニシティー』(6/6)

不定期連載企画、懐かしの名盤ジャンジャカジャーンのシリーズ第8弾は、ポリスでお送りしている。推測たっぷりの凄まじい私見をぶちかましてきたが、今回でポリス『Synchronicity/シンクロニシティー』編はおしまいだ。

究極のアルバム『Synchronicity/シンクロニシティー』を作っていたころの最強ビートコンビは不仲だったと伝えられている。だが、職人の制作現場にそんなことは入り込む余地はなく、まぎれもなく最高傑作であり、ロックを代表するアルバムだ。発表後のツアーの模様を収めたライブDVDもまたすばらしく、不仲なんか微塵も感じさせない。やっぱりコープランドは世界一のドラマーで、どんなに仲が悪くてもスティングと紡ぎ出すビートは最強である。永遠に古くならない音がライブで放出されている。

ポリス以降も僕にとって3人は大好きなミュージシャンで、スティングのソロライヴに出かけたことがある。『The Soul Cages/ザ・ソウル・ケージ』を出した後で、ポリスの曲も聴けるかなとワクワクしながら横浜アリーナの席で登場を待っていた。さあそろそろだぞというタイミングで英語のアナウンスがあり、1部の客から悲鳴があがった。英語のわからん僕らはなんだと思っていたら、続けて日本語でアナウンスが入り風邪により公演が中止とのことだった。このときは、まだ行ったことがないからとわざわざ遠くの横浜アリーナでのチケットを取ったのである。武道館にしておけばよかったと後悔したが仕方ない。一緒にいった友人とやけ酒にしようと横浜アリーナ近所をうろついたがいい呑み屋が見つからず、結局電車に揺られていつもの街まで帰って呑んだとさ。まあ、今となってはこれもいい想い出かな。

昭和40年男にとって、ポリスをリアルタイムで見られたことは他の世代に自慢できる素晴らしい体験だ。彼らとの出会いによって、音楽の持つ可能性や力の認識をグーンと広げてもらった。ほんの短い活動期間であるが、僕らにとってはもっともいろんなものを吸収した10代と重なっていて、1枚出すたびに進化していく姿は大いに勉強にもなった。ポップセンスが豊かでありながら、女子供にはわからねえぜとの辛口な感じが、背伸びしたい盛りの男の子にはしっくりときた。高校時代にやっていたバンドで『孤独のメッセージ』をコピーして、ライブのオープニングにぶつけたなんて記憶も残っているポリスの3人に、今も感謝の気持ちを強く持っている僕だ。

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2件のコメント

  1. ポリス好きの昭和41年生まれの女子です。連載、大変に楽しく、かつ懐かしい思い出にクラクラしながら拝読いたしました。
    自分もやはりポリスとの出会いは「孤独のメッセージ」です。買ったばかりのラジオから飛び出してきた、あの印象的なイントロは、その日の強烈に晴れた青い空と相まって今も鮮やかです。クールで力強く、それでいて切なく…かといって切なさに溺れることはなく。
    いま、ポリスを説明する言説の中で「リーダーはスティングで」とか「ポリスはスティングが率いたバンド」といったものを幾つか見出すことがございますが、それは断じて違うといいたい。あの3人の力関係はけしてそんな単純なものではなかった。確かにメロディメイカーとしてスティングが他の二人を凌駕していたのは事実でしょうが、だからといってアンディとスチュワートがスティングに大人しく従っていたかといえばそんなことはない。彼ら二人はスティングにない音楽的センスに満ち溢れ、それもまたポリスサウンドの要でありました。メロディを作ったのはスティングだからといって、スティング=ポリスではない。その証拠に、のちにスティングがソロで展開した曲調はまったくポリスとは違うものでした。最近ではしみじみ思います。自分が好きだったのはスティングの音楽ではなく、ポリスの音楽だったのだな…と。
    スティングがその才能を開花させるにあたってスチュワートが大きな刺激になったという編集長の持論、大変刺激的です。ですが、やはりもう一人のポリス、アンディ・サマーズも同様であったと主張させてください。例えば「シンクロニティー」を作る契機の一つ、ユングは、アンディがスティングに紹介したものでした。思うに、スチュとアンディはスティングの音楽的養親です。そしてポリスは学校であり、スティングは二人の卓越したミュージシャンとの葛藤の中で見事、鳳となって世界に羽ばたいていったのだろうと思えるのです。

    • ポリスは学校、すばらしいっ。僕もそう思います。シンクロニシティーツアーのDVDは観ましたか? 3人が一緒にいた奇跡をビシビシと感じさせてくれますよ。『孤独のメッセージ』もバッチリだし。

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