懐かしの名盤シリーズを心待ちにしていた音楽ファンの皆様、大変長らくお待たせしました。シリーズ第8弾をお送りしよう。これまで取り上げた洋楽ミュージシャンは、ストーンズ、クイーン、ロッド、ツェッペリン、エアロの5組で、平均的な昭和40年男が洋楽にのめり込む時期よりも以前が、もっとも輝いていた連中で、僕らは後追いでありながらむさぼりつくように聴きまくった。当時においてはロックの正しい楽しみ方のひとつだが、ここら辺で1発リアルタイムミュージシャンから1枚選ぼうと思案して、ポリスの登場となったのだ。デビューが1978年で中学生のころだから、洋楽に興味を持ち始めた頃と重なる方が多いのではないだろうか。僕が彼らを知ったのは、ダイヤトーンポップスベストテンのチャートを駆け上がっていった『孤独のメッセージ』で、それまで知っていたロックミュージックとはあきらかに異なる響きに当初は違和感を感じた。聴き込むうちに気に入っていき、続いてシングルカットされた『ウォーキング・オン・ザ・ムーン』で再びショックを受けて、ポリスの名は深く刻まれたのだった。
僕自身が尊敬するミュージシャンたちは、過去への時間の旅で拾い出してきた連中が多い。たとえばビートルズを、リアルタイムで感じていたタメ年男はまずいないだろう。素晴らしい作品であるから時間を超越して我々に届いたのだ。だが、リアルタイムで聴けたのなら、さかのぼって聴いた我々より価値ある体験であることは間違いない。ビートルズが日本を席巻していく波を感じながら聴き込み、新しいアルバムの発売をまだかまだかと待ち続け、出てくるとまた世界が一変するような勢いを体感した先輩たちは本当にうらやましい。
昭和40年男にとって、ビートルズやジミ・ヘンドリックスのような、ロック創成期の中、なにもないところに突如表れたといった存在はいない。だが、シーンが膨張する中で革新的な連中は次々と表れ続けた。エキサイティングな時代だったと胸を張りたい。才能あふれる多くのミュージシャンたちと、リアルタイムで過ごせたのだ。その中でもひときわ存在感を示すのが、ポリスだ。トリオで登場した彼らが約6年の活動期間で残した5枚のアルバムはどれも素晴らしく、とくに『Reggatta de Bianc/白いレガッタ』と『Synchronicity/シンクロニシティー』の2枚は、お気に入り具合ではまったく甲乙がつけられず、究極の1枚として軍配が上げたのは、全体の完成度の高さとビートの狂気によるものだ。(続く)
「Synchronicity」というアルバムはロックミュージックの極北といっていい作品だと思います。あそこまで行った以上、ポリスは解散するしかなく、スティングはジャズメンたちと新しい方向に進んだのでしょう。
そうですね。あれ以上のものが世の中に出てくるイメージできないですものね。