昨日お伝えした通り、今年のフルへのチャレンジは棄権となってしまった。有言不実行は男として最悪の行動であり、情けないことであり、腹のひとつでもかっさばけくらいの重罪である。このような結果となったことを、全国の100万人読者様にお詫び申し上げます。ですがここは開き直って、傍から見たマラソン大会というのも実に有意義であったのでレポートとさせていただこう。
僕たちチームクレタは、上野8時発のスーパーひたちに乗り込み勝田駅を目指した。車内は満席状態で、乗客のほとんどがこのマラソンのために乗り込んでいるのは一目瞭然だ。おそらく普段はガラガラだろうから、大きな消費を生んでいることになる。勝田駅に着くと人でごった返していて、帯状になって会場へと向かいながら、これから走り出す不安を語り合う。万全の準備ができている市民ランナーなんかいない。マラソンの名ゼリフに「ラッキーはない」とある。シンプルな体力勝負ゆえ、練習した分だけキチッと結果に出るのだ。これから始まる長旅のキツイことを知っていて、わざわざ電車賃をかけてくるのだから、これまた名ゼリフ「ドMの集い」の大行進だ。電車賃以前に、参加費を払って、さらに練習に時間をつぎ込んでこの日を迎えているのだから、もう超が付くドMたちだ。この愛すべき大集団のほとんどがレースのことを語り合っている中、僕だけが走らないのに会場へと向かっていた。涙が出そうなほど悔しかった。
会場に着くと過去最高参加者とのふれこみどおりに、ゴール地点付近はレジャーシートでビッチリだ。フルだけで約1.3万人、10kmの部を足すと2.1万人を超えるエントリーで、僕が走り始めたころのフルへのエントリーは確か5〜6千人だったから、20年で倍以上に膨らんだことになる。大きな影響は東京マラソンに端を発した空前のマラソンブームであり、加えて東京マラソンは倍率の高い抽選なので、当たらなかった方がずいぶんと流れ込んできているようだ。
本誌の呼びかけに答えてくれたチャレンジャーたちは、フルマラソン歴のある面々で、出走30分前に記念撮影した。これが済むと僕はなんの任務もない、ただのギャラリーとなった。寂しい。走らないくせに参加賞をもらいにいくと、手渡しながら「頑張ってください」と声をかけられ、もうホントに涙がちょちょ切れた。
号砲が鳴り響き、スタートから1kmちょっとのところで応援するも、あまりに人が多くて全部で10人以上いる仲間たちは1人も見つからず、応援さえできないのかとまた落ち込んだ。フルに遅れて10kmの部もスタートすると、会場付近はさっきまでの喧噪が嘘のように静かになり、これまた寂しさがこみ上げてくる。“祇園精舎の金の音?”って、違ーう。
やがて10kmの部のランナーたちがゴールに続々と戻ってくると、会場はまた活気を取り戻して、さっき以上の大きな笑い声に包まれる。「いやー、キツかったよ、ハッハッハ」「さあ、ビールビール」。うらやましい限りで、このときには惨めな気持ちになっていた。そしていよいよ、フルの選手が入ってくる。トップクラスから数人までは、陸上人生を歩んでいますとにじみ出ているが、2時間40分を越えたあたりから徐々にいかにも市民ランナーですといった連中が入ってくる。3時間を切りながら牛のかぶり物をしているのにはビックリした。そして人間にとって目標というのは、いかに素晴らしいものなのかと考えさせられるのは、3時間を前にしてゴールに飛び込んでくるランナーが激増する。過ぎてしまうと悔しそうに入ってくるランナーが続き、10分もすると減ってくる。そしてまた3時間30分前後にも同じことが起こる。切りのいいところをみな目標にして踏ん張るのだ。
4時間を切ることを目標にしている僕にとって、3時間台で入ってくるランナーは憧れの存在である。ところが、中小太りのおばちゃんや、どう見ても50代後半、もしかすると60代じゃないかという方まで続々と入ってくる。見た目からしてランナーだねという方より、失礼ながら普通のおっさんおばちゃんが多い。僕ってこんなに遅いんだな、目標が低いなと思ってしまうほどたくさんの方々のゴールを見せられ続けた。この日初めて、ムクムクと元気になってきた。来年はまず4時間を切ろう。もっと目標を高くしていこうとそう思えた瞬間、僕にとっての次回勝田全国マラソンが始まったのである。バカ過ぎだが、帰りの電車はものすごくポジティブ気分で、やるぞーを繰り返していたのだった。
さて、最後になったが気になるタメ年チャレンジャー3人の成績を発表しよう。トップは3時間27分の五島さん(右)で、終盤キツくて失速したとのこと。驚異的だ。続いては軍地さん(左)で3時間46分。去年もチーム昭和40年男で走ってくれた菅谷さん(左から2番目)は3時間50分で、後半足をつってしまい何度もアキレス腱を伸ばしながらもこのタイムにまとめるのだから素晴らしい。今日になってこれらの結果報告をいただき、ますます来年へと燃える僕だ。今年の悔しさを必ずカタチにしてやる。来年こそ有言実行だ!!