デビューから35周年を迎え、記念アルバムを出すとのことで取材にでかけてきた。尾崎亜美さんといえば『マイ・ピュア・レディ』や『蒼夜歌(セレナーデ)』など数々の名曲に、『オリビアを聴きながら』や『春の予感』など楽曲提供でも多くのヒット曲がある。聖子ちゃんの中で、僕が最も好きな曲である『天使のウィンク』や、高橋真梨子大先生の『あなたの空を翔びたい』も彼女による曲なのだ。日本の音楽シーンになくてはならない音楽家であり、昭和40年男にとってはなじみ深い存在だろう。
今回リリースされるのは、全曲書き下ろしの10曲入りのCDに、名曲10曲を収録したDVDが付く豪華な内容である。話を聞いたのは主に新作となるCDのこと。完成が遅れに遅れたのが震災によるものだと、苦しんだ自身のことを語ってくれた。「音楽ができることってなんだ?」と自問自答を繰り返したそうだ。人が生きていくエネルギーのかけらにもなれないとまで追い込んだ末、でもやっぱり自分を元気にしてくれた音楽をつくることなんだと、完成までもっていった。サンプル音源を聴かせてもらったのだが、音楽担当の川俣とともにうなってしまった。大人が楽しめる余裕と艶のある歌唱、詞の奥ゆき、楽曲のセンスなど、なにをとっても一級品である。詞についての質問に対し「メロディとステディな関係を持ちたかった」ですと。はーっ、カッチョいいですな。
もうひとつ素晴らしいのがバックの演奏だ。そうそうたるミュージシャンの名が並び、タメ年シンガーの奥田民生さんもギターで1曲弾いている。亜美さんと一緒に演りたいと参加してくれたそうだ。バンドについては「アナログにこだわった」とのことで、これも昭和40年男にはうれしい。最終的にはCDに落とし込むからデジタル要素は入ってしまうが、録音では徹底的にアナログにこだわり、楽器の鳴りをそのまま詰め込んでいる。これがものすごく効果的で、演奏レベルが高いのに加え、絶妙な空気感と音の太さに繋がっている。細部にまで行き届いた上質な演奏に乗せるから、歌がキリッとする。やさしく、時にハスキーに、気持ちよく空を舞うように歌っていて、大好きなリッキー・リー・ジョーンズのアルバムを連想した僕だった。
2月22日発売でタイトルは『スープ』。タイトルチューンに秘められた想いとアルバムに収録された経緯は泣ける話で、ぜひ次号のインタビューを読み込んでほしい。
亜美さん大ファンっす。ダンナの小原礼さんは僕が世界一好きなベーシストっす。夫妻で書かれた料理本も持っていたりして。♪春のよか〜ん そんなきぃぶん〜