御茶ノ水は我が青春の街。

神保町で打ち合わせがあり、わずかながら時間に余裕があったので御茶ノ水から歩いた。初めて楽器店に入った時は、寿司屋ののれんを一人で初めてくぐった日よりもずっとずっと緊張した。さらに気に入ったギターの試奏なんてもう大人の中でガキが何やってんだと思われないように、必死で背伸びしたっけ。今じゃむしろ俺の歌を聴けと試奏しながら歌っちまうのだから、人生経験てのはすごい。

 

これまで何本ものギターをこの街で買った。高価なのを60回払いとか、前日に観たライブに影響を受けて同じモデルを買ったりとか、ヘンドリックスに憧れて少々ラフに使ってもいい価格のホワイトストラトだったり、それぞれに思い出があるがもっとも興奮したのはフェルナンデスのストラトコピーモデルだ。高校の合格祝いに金を持たせてくれた親に感謝しながら、写真の店で予定と異なるモデルの購入になった。そもそもは秀逸なカタログに惚れ込んでTOKAIに決めて御茶ノ水に行ったのだが、まだカタログができていないプロトモデルだから作りが丁寧だと、ここのお兄さんに言われるがままに信じ込み予定変更したのだ。そんなセールストークやしゃべり方、顔までもはっきりと記憶しているのはそれだけの興奮を楽器屋に持ち込んだからだろう。今も現役で頑張ってくれているから、結果いい買い物だったのだろう。お兄さんに感謝だな。

 

今回の散歩ではまずその店に赴いた。ベース専門店になっていたのはちょっぴり残念ながら、屋号は変わらずクロサワのままだ。あの日の高揚感が昨日のことのようで、それ以前に買ったグレコのレスポールコピーモデルと、この時購入したストラトを2本持ち込んで、人生を根こそぎ変えてしまった自主ライブを行ったのが1981年の3月31日だ。高校の合格発表が2月下旬だったから、この記念日の1ヶ月前くらいに購入したのだろう。

 

学生相手にした安い食堂が多く、キレンジャーな僕を誘惑するカレー屋がすげー増えていた。そして楽器街らしさは色あせていない。現在の少子高齢化によくぞ成立するなと思うが、どっこい俺たち世代も支えていると思われる。ショーウインドウを眺めているおっさんが多く見受けられたもの(笑)。のんびりと神保町までの散歩では、変わってしまったところも見受けられたがおおよその空気感は変わらず、あの日へのタイムスリップをたっぷりと楽しんだのだった。同じく神保町界隈も昭和の空気感が色濃く残っているので、皆さんもタイムスリップ散歩を楽しんではいかがだろう。

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