もう梅雨なの? と、お嘆きの貴兄には『昭和40年男』の最新号が必要である。てなわけで、僕のつぶやきは最新号解説の大編集後記をお届けする。
なんたることよ、武道館とは武道をやるべき聖地であ〜るとの喧騒が起こったそうだ。戦後イデオロギーのマグマがあちこちでくすぶっていた昭和41年のことだから、当然といえば当然だろう。その騒ぎの主役がビートルズで来日公演を行った。当然ながら我々世代はなんの記憶もなく、後にその伝説を知ることとなった。この公演については、序章の東京オリンピックでも触れているのでぜひご覧あれ。
6月29日に来日して、30日の夜から1・2日はそれぞれ2公演を行った。オープニングの「ロック・アンド・ロール・ミュージック」によって、日本でロックが胎動したのだ。しかも日本武道の殿堂で高らかなるまるで宣言のようである。当時僕がおっさんだったら、反対派にまわっていただろうな(笑)。
サンプラザ中野くんによって4ページにわたり武道館を語っていただき、それに続く2ページが今日のビジュアルページだ。このページを担当したのは2コ下のライター、宇都宮ミゲルでもうずいぶん長いこと『昭和40年男』を支えてくれている大切な存在だ。で、ここで強く述べたいことがある。大編集後記で解説してきたことだが、今回の特集はほとんどの同世代諸氏にとって接することができなかった昭和イベントを、“証言者” によって再現するということに主眼をおいて構成している。つまり、宇都宮はこの左ページのライブを全て生で見ていたということだ。ゲゲッ、うらやましである。しかもなんと、小学3年生にしてKISSの初来日ライブに遭遇しているではないか。なぜそんな幸運なのかは、本文をご確認いただこう。
実は僕、剣道少年だった。通ったのは荒川警察署で、夏の武道館で5人で戦う団体戦に出場する。対象が警察剣道・柔道であり予選はない。東京都の警察で教えているところは、5人揃えて手を挙げればもれなく武道館で試合ができたのである。僕はこの大会に小中毎年出場して…、全部負けた。ちなみに僕が所属して出場した大会において、荒川警察署は全て1回戦敗退である。それでもあの舞台で試合ができたことはいい想い出であり誇りである。そして毎年帰り道、張り切って応援に来てくれたおっかさんが落胆していたのが、ちょっぴりほろ苦い。
時は流れて高校1年生になった。かつてのカワイイ少年剣士は、高校入学直前にロックで生きることを誓い、それだけを夢見て生きる不良になっちまった。誓いを立てた直後の5月に出かけたのがロッド・スチュワートのコンサートで、僕にとっては生まれて初めてのロックコンサートだ。あの頃のロッドなんで会場は女性の方が圧倒的に多かった。オープニングに最新アルバム『パンドラの匣』から「自由への翼」が演奏され、僕の中のロックが弾けて、全身にこびりついた気がした。後半には、CMにも起用されたヒット曲「今宵焦がれて」の合唱になり、女性のかわいく大きな声の壁に強く感動して泣いた。コンサート終了後、ずっとずっと席から離れなかったのはなぜ? スタッフの方に「帰れっ」と言われるまで立ちすくんでいたのは、「いつかここで演奏する」という夢を強く抱いてしまったからだ。って、夢はまだ実現していない。えっ、まだ夢見てるのかと突っ込むなかれ!!
p.s.『昭和40年男』ブロデュースの、ボズ・スキャッグスの名曲を、ぜひご視聴あれ!!