酒井順子さんと僕が作る女性誌の奇妙な縁!?

2005年のことだ。僕を大いに悩ませたのが、人生初となる女性誌へのチャレンジだった。女性誌といってもバイク雑誌だったからなんとか作れるだろうと作業を始めたものの、これが難産どころでなかった。創刊前年より「女性誌、女性誌」とブツブツつぶやいているのは、去年よりの僕とまったく変わらない。書店の女性誌コーナーに毎日のように繰り出し、苦手 (!?) な女性にヒアリングを繰り返したりと本当に悩ましい日々だった。そして僕にひとつの光明をくれたのが、酒井順子さんの著書だったのだ。

 

当時、世の女性に痛烈に問うた一冊で03年発行の『負け犬の遠吠え』だ。どんなに仕事ができても、30歳を過ぎて未婚で子なしの女は負け犬と定義して、そうならないためとなってしまった場合のアドバイスで綴ったエッセイ集だ。すごい人だなと感心させられたのは、すべてがストンと完璧に腑に落ちたからだった。そこに、多くの女性ヒアリングをクロスしたことによって「イケる」と拳を固めたのだ。

 

雑誌名は以前あった女性向けバイク雑誌の復活ということで『レディスバイク』とした。僕が編集長時代のロゴマークは、Lとbikeの間に+をつけて作り込んだ。そして『昭和40年男』で言うところの “明日への元気と夢を満載!” にあたるキャッチコピーを、“プラスバイクでリフレッシュ! 負けないオンナのバイクスタイル誌” としたのだ。“負けないオンナ” は、当然ながら負け犬へのカウンターである。

 

ヒアリングでわかったことは、バイクに乗る女性は自立していてステキな方が多い。バイクに乗らない方も対象に聞き込みを実施して、負け犬にはなりたくないけどそれもまた人生と考える仕事バリバリの方も多くいたのだ。04年にモーニングで連載が始まった安野モヨコさんの『働きマン』の主人公もずいぶんと参考になり、仕事をバリバリこなして彼氏はいるけど週末はバイクでひとりスカッとする方が好きな20代後半の独身女性をターゲットに定めた。言い換えると、仕事バリバリのオンナにとってバイクは最適なアイテムだぜと掲げたのだ。「つまんねえ彼氏とグチャグチャ過ごす週末よりも、アクセル開けて風になる」ってな感じで、この辺は『働きマン』の主人公、松方弘子がずいぶんと助けてくれた。負け犬と呼ぶ世間に対して、バイクで立ち向かえオンナたちよと。人生にバイクをプラスするだけで負け犬にはならないぞと作り込んだ『レディスバイク』は、05年の4月6日に創刊してスマッシュヒットと呼んでいい成績を残し、不定期ながら現在も続いている。つまり『負け犬の遠吠え』に足を向けて寝てはならぬということだ。

 

巡り巡って16年を経て、また女性誌を手がけている。悩み続けている僕を哀れに思った友人が、写真の『駄目な世代』を参考になるかもしれないと貸してくれたのである。著者はなんと酒井順子さんだ。そして読み込むとやはり以前同様、ストンストンと落ちる落ちる。ひとつ下の彼女が自分世代を駄目として綴っていて、今回ターゲットにしている昭和45年女よりは少し上になるが大変参考になった。再び偉大なる指南書となったことになる。持つべきものは友であり、偶然では片付けられない気がする。僕にこうまでアドバイスしていただいているのだから、創刊したら酒井さんにご挨拶にうかがおうかな。な〜んてことを考えている創刊カウントダウンの今日だ。

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