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■寡作ながら熱狂的なファンも多い『ファミ探』シリーズ
Web担当A (以下 “A”): シリーズとしてなかなかの人気があったんですねぇ…。恥ずかしながら自分は、『ファミコン探偵倶楽部』というタイトルは知っていたものの、これまた全然ノータッチだったんですが… スタイルとしては、いわゆるアドベンチャーゲームですよね?
山崎 功氏 (以下 “山”): 内容としてはオーソドックスなアドベンチャーなんですけど、とにかく演出が凝っていてイイんですよね。音楽もすごくよくて。当時プレイした人はみんな「ファミ探は傑作!」って言いますよね。ちょうどSwitch版をプレイしている人も多いでしょうし、ネタバレになっちゃうからあまり具体的なことを話せないんですけど…(笑)。
A: 確かに…アドベンチャーはシナリオが命ですもんね。でも何も触れないとよさが伝わらないので(笑)、言える範囲で、たとえばこんなところがスゴかったとか、あります?
山: 僕がよく覚えているのは… 学校を訪れるシーンがあるんですけど。昼間に行った時は普通に楽しそうな音楽が流れてるんですが、夕方に行くとものすごく寂しい感じになるんです。あぁ夕暮れの校庭ってこういう寂しい気分になるよなぁ…なんて懐かしい気持ちになったりして。今でもあのBGMは思い出す時がありますね。あと…これはやっぱりネタバレになっちゃいそうですが、ラストの方で、すごく静かな音楽が流れていると思ったら、急にバンッ!と大音量になったりするところがあって。クライマックスのこれには本当にビックリさせられました。あの演出はマジで怖かった!っていう人が多いですね。
A: 怪談でよくある「それは…お前だッ!!」って最後に大声でビビらすみたいなヤツですね(笑)。そうか、そんなトラウマになるぐらい演出が冴えてたんですね~。
山: 前編、後編と分けて発売されたので物語のボリュームもありましたし、前編のラスト…後編への引きみたいなところもドラマチックでよくできてて、早く続きがやりたい!ってワクワクしましたよ。
A: しかし、それだけ人気で名作として評価も高かった割には、スーパーマリオやマリオカートなんかと違って、あまりシリーズ作が出てないですよね?
山: ええ、整理すると、最初のディスクシステム版2作… ’88年の『消えた後継者』前後編、’89年の『PART II うしろに立つ少女』前後編と、サテラビューで ’97年に配信された『BS探偵倶楽部 ~雪に消えた過去~』、ストーリーとしてはこの3作だけ。あとは、’98年にスーパーファミコン用の「ニンテンドウパワー」書き換えソフトとして『PART II』がリメイクされてますが、これを入れても4作です。それから20年以上経って、ようやく今回のSwitch用リメイク版が登場、という流れですね。
A: そうか、今回のはそんなに久々のリリースだったんですね。
山: 移植だったら、2004年のゲームボーイアドバンス用「ファミコンミニ ディスクシステムセレクション」版とか、その後もWiiやWii U、Newニンテンドー3DS用のバーチャルコンソール版がリリースされてたんですけどね。『BS探偵倶楽部』以外は、割と気軽に遊べる環境にはなっていました。
A: う~ん、それってやっぱり、人気も需要もあったってことですよね。なのに、どうして新たな続編は全然作られてこなかったんですかね~?
山: 続編を出してほしい、っていうファンからの要望はずっと任天堂に寄せられてたようなんですけどね。ファミ探シリーズは『メトロイド』シリーズも手掛けた坂本賀勇さんが原作・脚本・監督などを務めたんですが、社内でも特異な “任天堂らしからぬゲーム” として認識されていた、ということはあったみたいです。これに関しては宮本 茂さんが後年のインタビューで、任天堂としては常に新たな遊びの要素があるゲームを提供したいので、ファミ探のように昔ながらのアドベンチャーのシステムでスト-リーだけ新作、といったものは、人気があっても今となってはあまりやりがいを感じない、といったことを語っていたと思います。
A: なるほど… 任天堂らしさ、ということにこだわると、なかなかリリースの機会がなかったというのはわかる気もしますね。ディスクシステムやスーファミの頃は、容量の少ない中で映画的な演出でストーリー主体のゲームを作ることに新味があったけど、今となってはそれだけでは…ということですよね。
山: ですね。株主総会で「ファミ探の続編は出さないのか?」という質問が出たこともあったんですが、その時は、今や世界的企業となった任天堂では、1つのタイトルを10ヶ国語以上にローカライズしていて、テキストやボイス主体のアドベンチャーゲームだとその手間やコストが膨大になるので難しいだろう、といった主旨の回答がされてましたね。
A: へぇ… 昔ながらのアドベンチャーでなくても、ストーリーが細かく分岐していくタイプのゲームは最近ますます多い気もするんですけど… そんなもんなんですかね~。とにかく任天堂としては、ファミ探は “本流” のタイトルではなかったと。それからすると、今回のSwitch版はよくリリースされましたよね。
山: 確かに。それだけファンの要望が根強かったのと、あとは、現在の任天堂の開発陣の中にも “ゼヒ出したい!” という熱狂的なファミ探ファンがいたのかもしれませんね(笑)。
(次ページへ続く → これがッ “幻のゲーム”『BS探偵倶楽部 ~雪に消えた過去~』だ! [3/4])