村上春樹作品のざらつきと、宮沢賢治の幻想を楽しむ。

先日、日刊ゲンダイから “伝説の編集者 とっておきの「読む」ツマミ” という難しい取材を受けたことは、以前もつぶやいた記事のリンクも貼り付けた。何が難しかったって、まず僕は伝説じゃな〜い (笑)。そして、編集者がレコメンドする “書” ってやつのハードルの高さだ。インテリジェントを気取りたくないが、バカじゃまずい。でもそこに吞みながら読むということで、だいぶラクになりこれらを選んだ。

 

3つのシチェエーションで考えた。まず普段のような焼酎のガブ呑みだ。酔っ払っても楽勝に読めて、酔っているからこその発見ができるという意味で『あしたのジョー』を選んだ。梶原作品の中でも僕のベストワンである。紀ちゃんと葉子のジョーへの思いが酔った自分に深く突き刺さる。それと、記事にもなったが、ちばてつやさんとお会いできたときにおっしゃっていた、ジョーのいたドヤ街は僕の育った町屋界隈がモチーフになったというのもなんだかいい。ちなみに、泪橋も近所にあって簡易宿が乱立していた三谷も近いから、ちばさんからこの話を聞くまでは三ノ輪から三谷、南千住界隈がモデルとばかり思っていた。愛した作品の真実を知ることができて、生きててよかったと思ったほどだった。

 

そして2つ目は、ウィスキーをロックでダンディに呑みたい時だ。本来このシチュエーションでは断然音楽なのだが、書で考えると村上作品のデビュー2作がもってこいだ。この2冊はまだ学生だった氏が書き上げているからなのか、パンクのテイストを感じられる。それと圧倒的なザラザラ感が好きでたまらない。これ以降の作品はひたすらに滑らかになるが、2冊は僕にとってクラッシュやポリス、初期のストーンズのような辛口も感じさせてくれる。加えて『1973年のピンボール』のラストシーンは見事すぎる。

 

もっとも酒がうまく呑みたい、例えば締め切り後のただひたすらリラックスしたいというシチュエーションでは、宮沢賢治の『やまなし』である。この作品は僕ら世代だと国語の教科書に採用されていたから、知っている方が多いはずだ。カニの親子のほのぼのとした世界がいい。想像力を掻き立ててくれるシーンや登場する名称など、まさしくワインで泳ぐとは我ながらよく言ったものだ。国語の授業があまり好きでなかった当時の僕だが、この不思議な世界観に深く強く引っ張られたことをハッキリと記憶している。やがて大人になって思い出し、絵本で購入したのだ。この作品は青空文庫で読める。ここに厳選して挙げた中でも僕にとって読むツマミには、最高の1冊だとここに発表させていただく。今宵が深くなり、家族が寝静まったら読んでみてはいかがだろう。

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