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「男達のメロディー」は投げやりに歌ったらウケちゃった
「その話が決まった時はまだワン・ライン・バンドだったんですけど、日本テレビ音楽の専務が『バンド名がよくない。SHŌGUNがいいんじゃないか』って。ちょうど『将軍 (Shogun)』という本が世界でヒットしていて、それをバンド名にしたらアメリカでも通用するんじゃないかってことでね。僕らは全くこだわりがなかったから『お任せします』って言って。実は、僕らはそれぞれスタジオミュージシャンの仕事で十分収入を得ていたし、『このバンドで力を合わせてがんばろう!』っていうトーンでもなかったんです。しかも新たに加入したケーシー・ランキンが作曲した『男達のメロディー』のカントリー調のところを僕は好きになれないから『はーしりー、だしたらー』って投げやりに歌ったんですよ。そしたらそれがウケちゃって。大ヒットした途端、好きになりました (笑)」
同じく79年、続けてSHŌGUNが音楽を担当したのが、松田優作主演のドラマ『探偵物語』(日本テレビ系) だ。主題歌がアップテンポの「Bad City」で、エンディングテーマはミディアムスローの「Lonely Man」。前者を聴けばていねいにいれたコーヒーをプーっと噴き出す工藤俊作 (=松田) が、後者を聴けば渋谷・公園通りのパルコの壁画前に立つ工藤がすぐに目に浮かぶ。SHŌGUNの曲がなければこのドラマの色は全く違うものになっていただろう。
「ただ、『男達のメロディー』もそうでしたけど、ラッシュすら観ないで作ったんですよ。優作さんのこともよく知らなかった。優作さんとは一度だけお会いしましたが、それもドラマが終了してから。怖いイメージがあったけど、低姿勢で『ああ、どうも』って挨拶してくださって。とてもいい人でした」
「Bad City」と「Lonely Man」、それに途中から『探偵物語』の劇中で使われるようになった曲も含んだ2ndアルバム『ROTATION』は、大ヒット。しかし80年7月発売の3作目『You’re the One』のリリース後、SHŌGUNはオリジナルメンバーによる約2年の活動をひとまず終えたのだった。
「解散とは言わなかったけど、僕は日々の他のレコーディングに追われていたし、大谷くん (大谷和夫。ピアノ担当。SHŌGUN楽曲の大半のアレンジを手がけた。2008年没) は『火曜サスペンス劇場』の音楽とかでどんどん多忙になっていたから、無理してSHŌGUNをやらなくても…、ってなってね」
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