梶原一騎先生の奥様。

でき上がったばかりの『昭和40年男』を眺める日々だ。今回もうちにしかできない特集が組めた。昭和40年男の熱源を探る思考の旅は、そのまま自分に当てはまるわけだから、つくづくこの本は不思議だなと、つくった本人ながら笑ってしまう。RCサクセションに始まり、山崎銀次郎や池中玄太、ゴレンジャーまで登場するのは、昭和40年男の熱でくくらなかったら、ただの無秩序な昭和ノスタルジーにしかならない。

特集のエピローグは僕を含めた座談会にした。それでなくとも忙しい昭和40年男たちを、暮れの押し詰まった時期に呼び出したのだから、まったくひどい話ではあるが、激論を交わした時間は楽しかった。青森、東京、兵庫と出身地が分かれて、地域による微妙な差が出たものの、大概が共通の感じ方や捉え方をしていたのは、やはり時代に流れていた空気なんだろう。モノやコンテンツから感じた勢いや、成熟し切っていない社会ゆえの信じ難い出来事など、すべてがダイナミックだった。なんとも心地よいシンパシーを楽しみながらの時間はあっという間に過ぎ、取材後の宴は深夜2時まで延々と続いたのだった。

梶原一騎先生を取り上げた取材は、深く心に残るものになった。梶原先生の自宅を訪ね、奥様からたっぷりと話を聞けた。一度離婚していながら、舞い戻ってきた壮絶な暮らしぶりを赤裸々に語ってくれ、時折涙ぐむ場面もあった。愛し合っていたのだ。そして彼女の証言の数々から、氏の作品に流れている熱い男の生き様と正義が、どこから湧いてくるのかがわかるページとなった。梶原先生の作品は間違いなく我々の心に染み入っているから、今回の目玉企画の1つと胸を張りたい。

この仕事をしていてよかったと、担当した金子と2人で興奮しながらの帰り道だった。この日に杯を重ねれば、何時間でも語り合ったことだろう。だが、日本を代表する(?)呑んべえ2人でさえ、立ちはだかった年末進行にビビリ、さっさと仕事場に戻る夜だったのだ。禁酒してまでつくった次号は、いよいよ明後日には書店に並ぶ。乞うご期待だ!

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