「北さん、昨日は言い過ぎたよ。ごめん」
「いやいや俺もさ、ごめん」
昭和の小学校の教室で交わされた会話だ。男の子だったら誰しも喧嘩と仲直りの想い出が心に残っているだろう。そして大抵の場合、謝れば水に流されるのが昭和だ。同時に、仲直りする清々しさを幾度となく味わってきた。だが現代社会はだいぶ異なる。
「北さん、昨日は言い過ぎたよ。ごめん」
「ハーーーーーッ? ごめん? 無理Deathっ!! 言葉にしたってことは根っこにあるんだろ。そうだろ。ゼッテーに許さねえよっ」
そして翌日も、またその翌日も謝るものの北さんはいつになっても許すことはない。しかもそのことを学級会で発表してしまう。
「モリ君の発言はひどすぎるから、みなさん絶交してください。はっきりと言葉にしましたから、そういうヤツですから」と、一度発言したら撤回は不可能で、謝罪しても弾圧をやめない。しかもトレンドな発言で失敗してしまうと、言葉の暴力で執拗なる集団リンチとなる。女性蔑視やハラスメント、どうでもいい不倫なんかでもボッコボコにする社会の怖いこと。いつからこんな風になっちまったんだろうか。心配なのは、ちょっとしたミスでボッコボコにしたりされたりしている、国の偉い方々の姿を情報バラエティで見させられている子供達だ。まっ、テレビなんかよりゲームやYouTubeに関心が行っているから、さほど触れる機会はないかもしれないが。
LINEグループの会話で集団リンチとなったなんてのもあった。そんなもんを流出させるチームメイトを、僕だったらまず責めるだろうな。ともかくだ、日本人はいかなる場面でも聖人君子でなければならないということだ。呑み屋で不用意な発言なんてのも、これからは集団リンチの餌食になると思った方がいい。「くっだらねえなあ」と、小汚い言葉で吐き捨てることで、寛容な自分をなんとか演じている毎日だ。
そんな寛容な僕 (笑) でも、こいつは許せないというのが昭和の教室にもあったこんなやりとりだ。切れ者の女委員長が、周囲の3人の男たちを巻き込んで自分の意見をクラスで通そうとした。
「ねえねえクロちゃん、ケンちゃんとヒロ君は賛成したんだからいいじゃない。お願い」
「いやいや委員長、ちょっとだけ待っておくれよ。キチンと数字で確認したいんだよ」
そしてクロちゃんは、賛成の真意が知りたくケンちゃんとヒロ君に連絡を入れた。すると「えーっ、クロちゃんが先に賛成したんじゃないの。委員長がそう言ってたから渋々賛成したんだけど」
どうやらヒロ君もまったく同じように仕組まれたようである。こうした汚い手は確かにあったが、そんな子供だましの手を使うお偉いさんがいるとは恐れ入った。許し難いと思ったのは僕だけではあるまいが、いまだにボスの座に君臨しているのだから、世論としては間違った言葉の方が重いということだな。
と、執拗な集団リンチや呆れかえった嘘で3月はなんとも嫌な月だった。が、自分自身としては、わりといい点数をつけることができる1ヶ月を過ごせた。さあ、昨日40歳の誕生日を迎えた僕だ。今月も悔いのないように目一杯突っ走るぜ。ではみなさん、ご一緒に張り切ってまいりましょう。エイプリルフールだからって、委員長みたいな人を欺く嘘だけはやめましょうね!!