もうひとつ、仮面ライダーもので憧れ続けたのが
変身ベルトである。
電池でクルクルと回るもので、
これを巻いてライダーごっこでライダーを演じたい。
俺のもっとも欲しいアイテムとして
当時長きに渡り君臨した羨望の一品だ。
これは小遣いをどう貯め込んでも手の届くというものではなく、
親に頼み込むことのみが手に入れるための努力となる。
ある日、親父がとうとう折れた。
熱意は通じるものである。
神は我を見捨ててはいなかった。
買ってきてくれる日の夕刻、俺は勉強机につき教科書を広げて待った。
当然のことながら教科書なんか一文字も見ていない。
ただ、いい子で待っていなければならない。
それほどの事件なのであった。
誰と一番最初にライダーごっこをやるのかだけを考えながら
長い時間をやり過ごしていた。
「ただいま。おーい、買ってきたぞ」
「はーい」
いつもよりひときわ冴え渡るハイトーンボイスで
父親に駆け寄った少年が見たものは…。