不定期連載『懐かしの名盤ジャンジャカジャーン』エアロスミス編の続きだ。この連載は、洋楽邦楽問わず音楽クレイジーだった昭和40年男にとっての名盤を、各ミュージシャンから1枚、僕の独断でセレクトしている。悩みに悩んだ末選んだのは『ロックス(Rocks)』だ。エアチェックしたテープを繰り返し聴き続けていた僕は、お年玉で『ドロー・ザ・ライン(Draw The Line)』を購入した。期待どおりに好きになり、続けざまに『闇夜のヘヴィ・ロック(Toys In The Attic)』を手に入れた。『ドロー・ザ・ライン(Draw The Line)』以上にハマって、頭からケツまで毎日のようにかけた。中2の終わりの頃で、クイーンを数枚とロッド1枚しか持っていなかったコレクションに割って入りこんできたエアロスミス2枚は、強く存在感を放ったのだった。
話はグーンとそれる。この頃、僕は念願だったエレキギターを手に入れた。1年前のお年玉がフォークギターになり、やっぱりエレキが欲しくなった。以来、お小遣いを節約する日々を送り、お年玉を加えてグレコの一番安い、通称“空洞レスポール”を買った。一緒に寝たいくらいうれしかった買い物は同時に、ギターで食いたいなどという夢を描かせた。すると音楽の聴き方に変化が出始めた。純粋に楽曲を楽しむことに加えて、ギターのカッコよさや自分がプレイしたい音楽はどんなものかと探求し始めたのだ。そこにエアロスミスはぴったりとハマったのだ。
話を戻そう。2枚のアルバムを聴き続けていた僕が次にターゲットにしたのは『ライヴ・ブートレッグ(Live! Bootleg)』だった。これは先の寄り道話に起因する欲求で、憧れの人たちがナマで演奏した音に興味を持ったのである。ロックってヤツはライブが生命線なんだと知ったことも大きかった。2枚組は財布にずしりと来たが、針を落としていきなりきた『バック・イン・ザ・サドル』に脳天を割られた。「おおーっ、なんちゅうカッコよさじゃ」と。エアロ中毒が重傷になった瞬間である。このアルバムに入っていたピンナップを見つめてはため息をついた、アイドルでもあった。また、何万もの観客の前で演奏する写真に、僕の夢は膨らんでいった。とにかく狂ったように聴きあさったもので、頭から通して会場にいる自分をイメージしながら聴いた。だから古い音源の『マザー・ポップコーン』と『エイント・ガット・ユー』は外して、ラストの『トレイン・ケプト・ア・ローリン』の余韻が消えてからかけるから『ライヴ・ブートレッグ(Live! Bootleg)』は計5回も針を落とさなければならなかったのだ。スタジオ盤では感じなかった、これがエアロというバンドなんだと解釈して、ますます好きになった。個人的にはエアロの中で最もお世話になったアルバムで、ベストに挙げてもおかしくないくらいの存在なのだ。(続く)