『すすめ!! パイレーツ』に育まれた。

ガキの頃、僕はギャクマンガがあまり得意ではなかった。ブラウン管から届けられる笑いの世界は大、大、大好きだったから、自分自身で不思議に思うくらい苦手だった。それでも当時はもったいないからすべて見ていた。余談ながら、このもったいない精神が僕ら世代には大きな恩恵になっている。好きなコンテンツだけを狙い撃ちする現代との大きな差異で、様々なコンテンツを雑食で平らげたことは豊かな人格につながっているのだ (!?) 。今みたいに情報があふれかえっていない時代だったから、手に入れたコンテツンツは隅々まで目を通さないと “もったいない” のである。また、たとえば『ザ・ベストテン』などの歌番組では演歌から歌謡曲、フォークにロックまでも流す。そりゃあそうだ、ターゲットが家族なんだもの。だから自然と雑食で心に残る。当時はあまり好んでいなかったのにもかかわらず、今になって石川さゆりさんや八代亜紀さんの歌が胸に沁みるのは、やはりしっかりと受け取っていたからだ。

 

余談余談。ギャグマンガが苦手だった僕を夢中にさせた作品が『すすめ!! パイレーツ』だ。当時はそんな言葉で評せなかったが、今なら言える圧倒的にすばらしいリズムとセンスである。言葉にできないものの自然と感じ取って、異次元の作品に受け取ったのだ。この表紙ひとつとっても、今でも十分に通用するセンスじゃないか。

 

音楽の要素を巧みに入れ込んでいくのもセンスを感じたし、そのセレクトもたまらなかった。サザンが出てくれば「いま何時?」とギャグにするし、ディーヴォやクラフトワークといった最先端テクノも取り込んでいた。またまた余談ながら、日本で彼らのセールスがそこそこあったことに、江口さんは強く貢献していると思う。それはパイレーツの世界観の中で紹介されたからであり、やはり秀逸なリズムとセンスが絶対条件なのだ。

 

『少年ジャンプ』が出る度、友人と今回の『すすめ!! パイレーツ』について語り合った。ツボがどこだったかを言い合うのは、キラキラとあまりにもたくさん散りばめられているからできることだった。この単行本を引っ張り出して、あらためて読んでみるとすげーすげー。スピード感が半端でなく、その随所に笑いのツボが仕込んである。どんだけの集中力で毎週生み出していたのだと、今更ながら感謝の気持ちでいっぱいになって涙ぐんでいた。やれやれ、加齢とは『すすめ!! パイレーツ』で涙を誘うのか (笑) 。
 

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1件のコメント

  1. この巻の表紙も含め、扉絵がスタイリッシュになったり音楽を取り入れていったのは、「マカロニほうれん荘」の鴨川つばめへのライバル心だと江口氏本人が言っていました。なので、こういうお洒落なセンスは鴨川つばめのほうが先なのです。

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