映画『ボヘミアン・ラプソディ』を劇場で観たのがつい先日のように感じられるが、アマゾンプライムにラインナップされているのを見つけて再度涙した。ストーリーにはやや突っ込みどころはあるものの、85年までのクイーンをモチーフにした物語としては秀逸である。『ボヘミアン・ラプソディ』をめぐるメンバーとレーベルとのやり取りや、レコーディングでのシーンなどは思わず膝を叩いてしまう。こうして世紀の名曲が誕生したのだと、感動しないはずがない。
僕がこの曲に魂を撃ち抜かれたのが、1979年の正月のことだった。池袋のサンシャインシティにあったレコード店で叔父に買ってもらい、当初はその難解さに戸惑ったものの、虜になるのにそう時間はかからなかった。子供心に悟ったのは、第一印象のよくない曲にも名曲は多いというものだった。もちろん一発ですんなり入ってくることは重要であるが、そればかりじゃないんだと自分に押し込んで、以来僕は変態な趣味を見つけたのだ。
アルバムを買うとファーストインプレッションをノートに残すことにした。自分なりの書式を作って、曲名だけでなく作曲者や帯のコピー、レーベル名やレコード番号までを丁寧に1ページに書き込んだ。これが僕の編集作業の初体験かもしれない。そして曲名の横にまず初めに聴いた採点を20点満点で書き、5回ほど聴き込んだ後の点数を入れ、最終的には何十回と聴き込んで曲を採点して、その合計の平均点と全体のまとまりでアルバムの評価を決定させるというオタクな作業だ。聴き込み具合によって名曲に発展するものとそうでないもの、逆に落ち込んでいく曲があることを自分なりに分析したかったのだろう。残念ながらこの貴重なノートは手元に残っていないが、アルバムを買うたびにページが増えていくことに快感を得ながら楽しんだ。
そんな悪趣味のきっかけを作ってくれたのが、アルバム『オペラ座の夜』だった。デビュー作から『ザ・ゲーム』までをコンプリートした僕で、記憶の中にあるのは『シアー・ハート・アタック』『世界に捧ぐ』『ザ・ゲーム』はファーストインプレッションが高かったが、『クイーン2』はやたらと低かった。しかし聴き込むごとに得点を伸ばしていき、僕が一番好きなクイーン作品は2である。特にブラックサイドの2〜4は、フレディ・マーキュリーのソングライティングとクイーンのド派手オーバーアレンジが怒涛の波状攻撃となり、今も僕を錯乱状態にする(笑)。
1978年の夏頃にクイーンと出会い、少しずつ虜になっていき『オペラ座の夜』が決定的だった。一時嫌悪感すら覚えるほどその華美な世界から遠ざかったが、『イニュエンドウ』を聴いて再度近づき『ボヘミアン・ラプソディ』を二度観るまでに至った。この間、実に42年だ。変な例えだが、おぎゃっと生まれて厄年になるまでの年月である。うーむ、人生ララだな。そして僕は今、クイーンを使った小さな企てを作っている。12月16日にそれが明らかになるぞ (って、宣伝かよ)。