昨日発売した『昭和40年男』12月号。今回の特集で取り上げた、エレキギター国産コピーモデルはまさに憧れモノだった。ギターを弾き始めたばかりの中学時代は、カタログを毎日眺めてはため息をついていた日々だった。
僕がギターを弾き始めたのは、中一の冬だった。洋楽に夢中になって、単純な男の子はギタリストになりたいと夢みた。ヴォーカリストが飛び跳ねている横で、ニヒルにキメる存在になりたい。ドリフターズの一員になりたいという夢が冷めたころに、入れ替えに描いたのだった。
まず手に入れたのはヤマハのフォークギターだった。エレキは予算的にどうにもならず、それでもお年玉をつぎ込んで手に入れた興奮は今も忘れない。兄貴の影響で、すでにディープパープルの『ハイウェイスター』やジミヘンの『パープル・ヘイズ』を弾きこなしていた友人(なんちゅう中一じゃ)から「まずはコードを覚えろ」と言われ、近所の古本屋へ駆け込み、明星や平凡の付録を数冊買ってきた。1冊20円くらいで手に入った歌本は、ギターを手に入れたその日から欠かせない教科書になった。ギター最大の難関であるコード“F”がなくて、知っている曲を探すと「あったー」。さだまさしさんの『天まで届け』である(笑)。洋楽に目覚め、ハードロックをカッコよく弾きまくるイメージとはほど遠い曲だったが、そんなことはマスターできた喜びですっ飛んでいった。
1年を経ての冬、またまたお年玉と小遣いの前借りを足して、ついにエレキギターを手に入れた。グレコかトーカイのストラトコピーモデルがターゲットだった。自転車をすっ飛ばしてお茶の水の楽器街にあった有名店、石橋楽器で物色しているうちにレスポールタイプのモノにあっさりと変更してしまった。チェリーサンバーストの色とボディ前面のアーチに芸術を感じたのだ。グレコの定価45,000円のモデルで、確か2割引で買ったと思う。このギターは「空洞レスポール」と異名を持つ、美しいと思ったトップは材を張り合わせて作ったギターで、このときはそんなこと知る術もなく、先の友人にバカにされる結果となった。「だから一緒に行ってやるって言ったじゃないか」。後の祭りであった。
定価たったの5,000円違いで削りのボディを手に入れられたとの後悔はしたが、あの時の予算はギリギリだったから仕方ない。それに初めて手に入れたエレキギターの喜びは後悔よりも大きく、毎日眺めて磨き、そして弾きまくった。アンプを買えなかったから、ラジカセに突っ込んで音を出した。
さらに1年を経て、私立じゃなく都立高校に行くのだったら1本買ってやるとの親の条件に乗り、合格確実高校を受験してまんまと手に入れたのが、最新号の46ページに大きめで掲載されたフェルナンデスのストラトコピーモデルでFST80だ。カッコイイでしょう。色もまさにこのギターである。
トーカイのストラトタイプに決めていたのだが、前日に1本だけ入荷したと店員さんから受け取ると、運命を感じたのだった。う、う、美しい。まだカタログも刷り上がっていない。先行で少数だけ作ったから仕上げが丁寧だとの説明を受け「これください」となった。現在も所有していて、長いことケースの中で眠っていたのだが、今回の特集で火がついてしまい、引っ張り出すことにした。ただいま、修理入院中となっている。
後にギターを何本も買い、バイクやカメラに物欲を燃やしては手に入れてきたが、僕の人生でこの3本のギターほど興奮したモノはない。手に入れたときの感動と興奮が、鮮やかに残っている。皆さんにもきっとそんな興奮モノがあることでしょうね? なんてったって、物欲世代だもの。