麻婆豆腐が好きだ。そのベースとなったのはご存知丸美屋の『麻婆豆腐の素』だ。我が家は商売をやっていたから、お袋は家事だけでなく家業もテキパキとこなしていた。そんな中でこうした“素”は重宝したに違いない。そして僕ら食い盛りの兄弟も大喜びだった。この広告どおり、まさしくかきこんだものだ。
甘口に始まり、中辛にステップアップした時は、大人への一歩を踏み出したと感動したことを強く記憶している。その記憶が先日覚醒した。浅草で昭和25年から営業する名店『水口』の麻婆豆腐の昭和っぷりはすばらしく、リメンバーしたのはガキの頃大好物だった丸美屋だった。以来、水口の麻婆豆腐ジャンキーとなってしまった。みなさん、浅草にお越しの際はぜひこの名店の暖簾をくぐって、普通にうまい昭和を堪能してくれ。
いやいや、本題だ。先日交通広告を得意としている会社さんが案内に来てくれた。コロナの影響で大幅値下げを断行するという。「本当に参考にさせていただく程度で、予算の捻出はほぼありませんが」と電話口で伝えたのだが、それでもよろしいと来社くださった。うちも例外でないが、広告関係はコロナ渦で軒並み大打撃だ。前提として、企業が広告する際にデジタルがあまりにも有効な方法になっているというのが強くあり、我々のようにとかく“紙”と蔑まれる雑誌広告は斜陽ではあった。加えてコロナということだ。だが、“紙”だってただ指を加えているわけじゃない。どこもそうだが、必死になってデジタル発信とのミックスに取り組んでいる。成功例も多くあり、我々も奮闘を続けている。
うん? なんだか今日は脱線ゲームが著しいな。で、来社いただき説明を聞くとアッと驚く為五郎な値引きだ。JRは天文学的数字だったが、地下鉄や私鉄ならがんばれないことはない…、かもしれない。兄弟誌の『昭和50年男』の知名度を一気に上げるのに有効だろうし、おっさんはわりと見ているから『昭和40年男』ももちろんありだ。雑誌だからこの丸美屋のようなタイプでなく、憧れは断然中吊りだ。
最近はテレビも大変なことになっているのは、きっとみなさんもお気づきだろう。現在の画面のタテヨコ比になっていない古いフィルムが流れたりしているのは、相当のダンピングの末に勝ち取っていることは想像にたやすい。テレビCMだとしたら、中吊りと同じく強く憧れるのが「昭和40年男は今日発売です」と、かつて『週刊新潮』が毎週垂れ流していたアレをやりたい。うーむ、やはり僕ったら昭和だな。中刷りとテレビで一気に仕掛けるか? と、そんな余裕なんかないくせに、夢は広がったご提案だったのさ、チャンチャン。