僕の独断で、各ミュージシャンのベストアルバムをセレクトしている不定期連載「懐かしの名盤」である。レッド・ツェッペリンの途中なのだが、一昨日の悲しい知らせを受け、追悼の意を込めて特別編を割り込ませている。昭和40年男と柳ジョージさんとの接点は、なんとも幸せな時代であるがお茶の間ではないだろうか? きっとその出会いは歌謡番組やCMが多いことだろう。彼の数ある名作から僕が選んだ1枚は、『1981.12.19 Live at Budokan』だ。
柳ジョージさんは和製クラプトンと呼ばれたが、僕は当時から違和感があった。彼がクラプトンの世界を好きだったことは否定しないが、2人は根本から決定的に異なるアプローチのミュージシャンなのである。それは、ギタリストかボーカリストかの違いだ。クラプトンは天才ギタリストが歌っているというスタイルで、柳ジョージさんはその真逆なのである。日本語で歌う天才がギターも弾いているのであって、武器は決定的に歌唱にある。しゃがれ声という点も似ているが、歌への入り込み方は似ても似つかない2人であるから、和製などとコピー品のように片付けられるのは心外である。
そこでだ、今回僕がこの一枚とセレクトした『1981.12.19 Live at Budokan』の素晴らしい歌をぜひ感じてほしい。バンド演奏もすさまじいテンションで展開されている。というのも、昨日ふれたとおり、柳ジョージ&レイニーウッドは1981年に解散している。武道館での解散コンサートを収録したアルバムが、同タイトルになっているのである。つまり12月19日の、師走も押し詰まった時期の解散コンサートだったのだ。こいつをアルバムにしてしまうとは、またもやザ・バンドみたいである。しかも、針を落とすと頭からいきなりアンコール曲の「テネシー・ワルツ」が始まるあたりも『ラスト・ワルツ』を感じさせ「ジョーやんてばっ、ちょっとやり過ぎじゃないの」と、よく思った。さらにテネシー・“ワルツ”ってね。
柳ジョージ&レイニーウッドのアルバムで、唯一新品で買ったのがこのアルバムだった。何度も繰り返してよく聴き込んだ。選曲そのものがベストアルバムと断言できるセレクトであり、解散コンサートを最高の演奏で締めようというメンバー全員の気がみなぎって、迫力があふれ出てくるようである。ありきたりのあふれ出るレベルでなく、はみ出してくるとかそんな感じだ。昨日は、悩み抜いてこれをセレクトしたと書いたが、ちょっとズルいのかなと思ったのが本音であって、それくらい鬼気迫るものがある。ラストの2曲の「さらばミシシッピー」と「プリズナー」が、そのまま僕にとって彼らの最も好きな2曲であり、パイオニアのCMで流れていた「さらばミシシッピー」をなんとなくでも覚えていたら、このアルバム収録テイクをぜひ聴いてみてほしい。腰を抜かすほどの、スゴイ演奏と歌がグイグイ押してくる。そしてラストの「プリズナー」が心の中に染み入ってきて、まるで特上の映画のごとくアルバムは幕を閉じる。
男ってヤツにドップリと浸りながら。昭和40年に生まれて、リアルタイムでこんな素晴らしい音楽たちに触れられたことに感謝しながら。濃い酒をしみじみと呑りたいものだ。そして、柳ジョージさんにお別れを告げよう。月並みだけど、さようなら、ありがとう。
柳ジョージさんの大ファンでした。当時中学生ながら横浜までコンサートに行き、そしてレイニーウッドの解散、まさにこのアルバムの武道館にて私は生ジョーちゃんを聞きました。限定版のアルバム・カセット版は2曲多かった記憶があります。両方買ったけどどちらも手元にないです。しかし、限定版だったものが今はCDで手に入るうれしい約束破り。ジョーちゃんの素晴らしい曲はこれからもずっと聞き続けるよ。ありがとうございました!!
あのライヴを観たとは、うらやましいです。プリズナーの前のメンバーのコメントとか、レコードでも涙ものなのに生だったら号泣でしょうね。僕は今日、ジョーやん歌いますよ〜。