アバのおもひで。淫らな夏の夜。

夏の空に、まるでもくもくと沸き立つような雲がいい。だが昨日あたりからだろうか、秋雲と入道雲がまるで空で対決しているかのようだ。蝉が「暑いの大好き〜っ」とでも言いたげな勢いで鳴きまくっている合唱に、ツクツクボウシが混じると昨日の空同様ちょっぴり寂しい気持ちになる。「オラの夏返せ」と、夏生まれで夏好きの僕はセンチメンタルジャーニーになる。とはいえ今日の東京は猛暑で、そんな寂しさを紛らわそうと夏歌の名曲を頭の中で追いかけながら打ち合わせ場所へと汗だくで歩いた。「おーっ 懐かしい」と、記憶の中に見つかった曲がアバの「サマー・ナイト・シティ」だ。

 

洋楽に興味を持ち最初にテープが擦り切れるほど聴いたのがアバだった。FMで録音したベストセレクトだった。当時はこの手の番組が多く、エアロスミス、レッド・ツェッペリン、チープ・トリックなんかの番組のテープが、やはり擦り切れた。ロック系を志向するようになり、アバとはすぐに離れてしまったが、やはり最初に好んだミュージシャンというのは想い出深いものだ。

 

「ダンシング・クイーン」はもちろん、「イーグル」や「SOS」、「ザッツ・ミー」なんかが好きだった。そして僕にとって、アバの中では異彩を放っているなと感じたのが「サマー・ナイト・シティ」だ。ゴージャスで優しいメロディが多い中で、淫らでセクシーな感じが子供心にたまらなかった。中坊でもわかる、タイトルは “夏の夜の街” だ。野口五郎さんがギターを持って歌った姿が印象的な「真夏の夜の夢」も、夏の夜の男女観が漂い個人的なイメージながらかぶった。

 

ネット社会とは本当に便利だ。この曲を久しぶりに視聴できた。当時は動いている姿をあまり見られなかったのに、ネットの中では美しいお姿の動画がバンバン出てくる。さらに、中坊のとき淫らな男女の絡みに感じた曲の意味を、40年以上の時を経て初めて知ることができた。月明かりの下を歩いて、公園で恋をして、朝を待つ。うんうん、なるほど。僕の直感は間違っていなかったな。

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