今朝の駅へと向かう道だ。暦の上ではすでに秋を迎えているけれど、いやいやどっこい、まさしく夏本番である。真っ青な空、それへとイキイキとした緑が立ち向かっていて、蝉の声は全開でうるさいくらいだ。気持ちいい、夏生まれにはたまらなく気持ちいい。
夏は輪郭がハッキリとした、さまざまな想い出の絵を心の中へと届けてくれる。ばあちゃん家で過ごしたガキの頃の日々や、キャッチャーミットにひたすらボールを投げ込んだ日々。警察の道場でフラフラになって竹刀を振り臨んだ武道館で、3年連続で負け続けた中坊の悔しい記憶。そして高校時代の3つの夏は、それぞれ苦くて甘酢っぱい絵が何枚も残っている。その後も夏はそれぞれに経験を積ませてくれているが、やっぱり人生においてこの3つの夏は特別な光を放っている。
今日みたいに暑い日は、高2の夏に出かけた横浜球場がフラッシュバックされる。野郎だけで行ったサマーコンサートは、メインにチャック・ベリー、さらにはサム&デイブのサム・ムーアがラインナップされていて、17歳になったばかりの僕にとって神様が2人と、さらに日本代表でRCサクセションが登場した夢のようなライブだった。興奮に次ぐ興奮で、まさしく夏に刻まれたスペシャルな体験だった。ありゃりゃ、あまり甘酢っぱくないな(笑)。
今年の夏はどんな想い出を僕に残すのだろう。55歳で迎える56回目の夏は、本来であればオリンピックでバッカみたいに騒いでいたはずなのだが、まっ、来年のお楽しみにしておこう。憎っくきコロナのおかげで、それでなくともスケールの小さな夏になりそうだってのに、誕生日が梅雨だったことでさらにスケールダウンしている。現在を鑑みて中止になったイベントはプライベートも含めて数知れずだ。
だが過ぎ去ってしまえばこれもまた強く記憶される夏に違いない。心に大きく響いている出来事だって数知れずだ。今日のような暑さもまたいとおかしで、最も暑いだろうという時間帯にちょっと長歩きして、仕上げに増上寺で手を合わせてきた。イベントごとがスケールダウンしているのなら、1人で盛り上がればいいとするバカ者だ。案の定汗が滝のように流れれば、前述した17歳の8月7日の自分に逆戻りできる。びっくり驚愕のオープニングだった「雨上がりの夜空に」で叫んで、ヒット曲「サマー・ツアー」で踊り、「スローバラード」に感激したあの夏の日は生涯の宝物だ。サンキュー、キヨシロー! OKカモン、チャボっ!!