昨日は『昭和40年男』で連載を持つタメ年落語家、立川談慶さんの独演会に出かけてきた。一昨日は芝居で、昨日は落語で笑い、ますます気分スッキリである。談慶さんは立川談志さんに弟子入りして20年を迎えたそうだ。慶応大学を出て下着メーカーのワコールに就職して順風満帆のサラリーマン生活を送っていた男が、一転して極めて不安定な噺家の世界へと足を踏み入れ、苦労に苦労を重ねて舞台の上にいる。あの談志さんのことだから、さぞ大変な修行人生だったことだろう。だがその苦労よりも、真打ちとして1人で生きていくことの困難の方がおそらく何倍も大変なことだと思う。そんな人生が言葉に乗ってきて聞き手の胸を打つ。そして一昨日同様、それを演じているのはタメ年男なのである。これが強いシンパシーになり、笑いが感動になるのだ。噺を下げてお辞儀する姿は、前日の暗転後の役者さんたちの整列お辞儀同様、わかっていることながら毎度感動の瞬間である。
一席30分以上に及ぶこともあるが、まったく退屈させない。たとえばライブで、ダラダラと続く気の入っていないソロには退屈させられることがあるが、これまで談慶さんの噺に退屈したことはない。もうかれこれ10席くらい聴いていると思うが、同じ噺は1回だけで一体いくつの噺が彼の中に入っているのだろうか? イキイキと描かれる登場人物たちは、頭の中に映し出されたスクリーンの中で暴れる。なんとなく顔までもが描かれるのである。だが眼に映っているのは談慶さんの身振り手振りでの話している姿で、この不思議体験が好きだ。
日本語の良さを感じられるのもいい。他の言語をしゃべることはできないからなんとも言えないが、落語は日本語からしか生まれない文化なのだと思う。柔らかさや緩急の付けやすい言語だからこそ、もっと言えば言葉のうらに隠れている奥ゆかしさなどひっくるめて、落語なのだろう。だから客の年齢層が高いのは仕方ないと思っている。ここに集まっている方々も若いころはヒッピー文化やビートルズに熱を上げて、ナウでヤングな(笑)青春時代を過ごしたはずだ。それが年齢とともに日本のよさを探求する年齢になり、そのひとつとして落語にふれようと集まってきたのだろう。僕自身、今の僕だから楽しめるのだと思う。タメ年諸君はぜひ体感してほしい→スケジュールはこちらから。
この2日間のガハハ体感を皆さんに話したいが、本日は店休のため『浅草秘密基地』はお休みです。来週ぜひお会いしましょう。