さらば、貿易センタービル。

浜松町が誇る高層ビルの貿易センタービルが建て替えられる。1970年竣工なので、ちょうど半世紀にわたってこの街を見下ろしてきた。彼の地、ニューヨークの貿易センタービルはあんなにも不幸なことになったが、こっちはなんとか責務をまっとうしたことになる。

 

最後の現役生活を送っているビルの隣で、長いこと工事が続いていた。そして写真のとおり、ビルが完成間近で貿易センタービル南館として開業直前だ。本来ならば、オリンピックを迎え入れるように開業を予定していたのではなかろうかと疑ってしまうが、まあともかくカミングスーンだ。こちらが無事開業した後に、兄貴の解体が始まる。かつて日本一の高さを誇ったビルの解体はちょっと注目である。

 

それにしても、東京はアチコチでニョキニョキとビルが建った。1964年の東京オリンピックで整ったインフラが、限界にきていたのだから当然である。だが、貿易センタービルにはまったく限界を感じない。天井が高くて立派なメインフロアに、外観だって古さなんか微塵も感じさせず、浜松町駅直結で圧倒的な存在感である。弟が結婚式をあげた思い出の場所でもあって、なんだかセンチメンタルな僕だ。ここの地下食堂街は、チェーン店の侵食は受けているものの一部に昭和の香りが色濃く残っていて、お別れの日まで満喫したいと考えている。昭和を愛するみなさんは、ぜひ出かけてみてほしい。ここに入っているそば屋ラーメン屋もちょっと一杯呑るのにサイコーだし、昭和なイタリアンもきっと楽しんでいただけるはずだ。間もなくオープンする南館には、昭和な飲食街はできないだろう。この一等地の新しいビルに、昭和な個人店が入ることは不可能だもの。

 

とはいえ、きっと50年以上活躍するから、その頃には僕のようにノスタルジーを楽しんでいる者がいることだろう。ウンウン、僕の後輩が『令和元年男』なんて立ち上げていたら素晴らしいな。僕がいつまでこの街に居られるかはわからんが、少なくとも僕よりも長くこの街を見下ろすことになるビルだ。その眼下に広がる東京が、未来永劫活気に満ちていることを祈っている。

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