昭和なカレーそばを探せ!!

なぜ、人はカレーを愛するのか? なぜ、熱狂と言っていいほど惹かれるのか? つい先日のこと、こいつで汗を流した僕だ。

 

おぞましい事件の記憶がまだ新しい富岡八幡宮にほど近い、東京下町の門前仲町でいただいた一杯だ。店頭に手打ち台があり、看板にももちろん手打ちの文字がある。加えて、昭和としか言いようのない見事な外観で、この店を見逃すようなら昭和なグルメ研究家の名折れである。ギラッと目が光ったかはわからんが、ソッコーでインだ。手打ちなのだからせいろだろと通の方は言うだろう。フッフッフ、僕は食通なんかじゃない。昭和なグルメ道を突き進む探求者なのだ。メニューとにらめっこしながらその鋭い眼がピタリと止まってしまったのは、冷やしカレーせいろだ。さらにあたたかいそば欄にはカレーの文字もある。気になったのはそのプライスだ。全体的に高めなのは否めないが、肉南蛮や鳥南蛮といったスターよりもハイプライスの1,200円。これは見逃せない大問題である。

 

僕の記憶に1,200円もするカレーそばを食ったことはない。くどいようだが肉南蛮よりも高いのはここの店主の自信の表れに感じてならない。これを見逃してしまったら『昭和40年男』編集長を名乗ってはならぬ。このハイプライスは店からのメッセージで、僕が想像するにはこうだ。「いいかい坊主、カレーそばってのはウチのを指して言うんだよ」である。元気に大盛りを頼んだら、大盛りはやっていないとのことだが、ご飯はサービスでつけてくれるとのこと。おっ、むしろその方がうれしい。そばを食い終わったカレー汁に入れてグチャグチャとやるのは、至福へと誘ってくれる。

 

僕にとってカレーせいろというメニューは、若干ながら邪の道を感じる。たぬきせいろやかしわせいろには感じないのだが、カレーせいろに関しては代用品だと思えてしまう。と、くだらないこだわりを持つのは僕がキレンジャーを名乗っている(なんだか色々と名乗っているなあ)からに他ならない。そう、昭和なグルメ道を突き進む探求者である以前に、僕の正体はキレンジャーなのだ。ってわけがわからん話をしているように思われるが、きっと♪日本のどこかに〜、私の気持ちがわかってくれる人がいると思ってこうしてつぶやいている。夏の昼でありながら、しかも手打ちそばで勝負している店なのに僕は写真の一杯をオーダーしたのだ。

 

うむうむ、イメージ通りの絶品である。カレーそばでは断然豚肉派で、かつ、長ネギがよい。ここの店主のカレーそば愛が半端でないことが、丼にたっぷりと詰まっていてこぼれそうだ。しっかりとした平打ちのそばは、熱々のカレー汁の中でもしっかりと主張していて、僕の投資に応えるのに十分の一杯だった。僕同様にキレンジャーを名乗る諸君、昭和なカレーそばを探して冒険の旅に出よ。このつぶやきの “昭和な〇〇を探せ” ではいつものとおりに、不親切なご案内とさせていただく。都営線の門前仲町の近くで、細い路地にひっそりと佇んでいて店頭の手打ち台が目印だ。健闘を祈る!!

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