出版業界は取次(とりつぎ)と呼ばれる
問屋さんによって守られている。
うちのような小さな出版社も
大出版社もみんなみんなお世話になっている。
俺はこの取次が大の苦手である。
簡単な話にすると、出版物の発行部数はここが決めるのだ。
圧倒的に強い存在なのである。
メジャー大手ならばいざ知らず、
少なくとも我々にとっては
非常に大きな力を持っている存在なのだ。
普段は取次担当と呼んでいる営業マンが
月に数回通い、それぞれの出版物の部数を交渉する。
「ちょっと前号重かったですねぇ。○○部ほど削りましょう」
「そこをなんとか、次はコレコレな企画で絶対に売れますから、
並び(前回と同部数)でお願いしますよ」
2人の間にあるのは、パソコンがたたき出すデータのみだ。
愛なんか入り込む余地はない。
こちらの情熱を伝えても、しっかりと頷いてから
やはりデータなのである。
そして今回のような創刊誌は
編集担当が営業と一緒に出向き、相談するようにしている。
より詳しく雑誌の方向性を伝えるためである。
ところが、これまでの俺の戦績を振り返ると
ほぼ全敗なのである。