この頃になると、テレビ番組や雑誌なんかから打ち込まれる、この1年を振り返る企画が楽しい。『昭和40年男』も10周年イヤーだった今年を振り返って、不定期でつぶやいていくとしよう。
いきなり脱線ゲームだが、『昭和40年男』は毎年、年末進行にやっつけられる。通常より1週間ほど早い締め切りとなるのだ。それでなくとも師走の混乱の真っ只中にいながらにして作るのだから、それはそれは大変な日々となる。今もまさしくその渦中にいるし、去年はこの表紙の特集でてんやわんやの騒ぎになっていた。そんな中で作った令和元年、いや、まだ当時は平成31年だった1発目の勝負は、ズバッと来た特集だった。心の底より愛する寅さんに敬意を表し「男はつらいよ」を頂戴した。が、にも関わらず、ご覧の通りキャラクターは力石 徹に任せた。このひねくれ方が『昭和40年男』スピリットだ。
お正月の発売だからと、このタイトルにしたというのもある。寅さんといえばお正月映画のイメージが強いはずだ。夏と冬のシリーズながら、エンディングが新しい旅先からのお正月という方がしっくりとくる。僕自身も暮れに必ず、お正月の寅さん1本をチョイスして観ることにしている(ヘヘッ、夏はもちろんその逆)。三谷幸喜さんの『有頂天ホテル』とともに、寅さんを暮れに観ることが僕の正しい年越しなのだ。と、そんな風に愛しているタイトルでお正月号の勝負に出たのだから、並々ならぬ気合いが入っていた。特集のアイコンとして作った寅さんのかわいいイラストも決まって、大好きな1冊で平成31年は幕を開けたのさ。
様々なつらい男が登場する。特集の冒頭ページでメッセージしたのは、“つらさに耐えることは俺たちのスピリットであり、邁進の原動力でもあったのだ”とした。やせ我慢が死語になっているような現代を嘆き、でも俺たち世代は加齢によってリアルなところでものすごくつらい人生を送っているよなと呼びかけた。極限の踏ん張りどころなんだとも。だからこそ頑張ろう。腹では泣いても上を向いて、笑って歩こうとメッセージさせていただいたのだ。うーむ、新年から暑苦しいなあ。
『昭和40年男』を作りながら、いろんな球種を持ちたいといつも考えている。そして、この号こそが僕にとっての直球ど真ん中なのだ。年末に全ての作業を終えて印刷所に託し「これでいいのだ」と迎えたお正月は清々しかった。