第52話 奥州平泉。(1)

 
この本の仕事だけに集中できたら
どんなにすばらしいだろう。
と、愚痴のひとつもこぼしたくなる兼務ぶりなのである。
ところがこれもいいように使えることもある。

締め切りの恐怖に震える9月13日。
イベントの仕事で岩手まで行かねばならぬ。
かねてより、軽い旅の1ページものを
入れたいなと思っていた。
台割表にも“旅の空から”というタイトルが
ずいぶんと早い段階で入っている。
が、誰がやるのか?
どんな企画なのか?
この段階で神のみぞ知るという状態。

そこで、このタイミングを見逃す手はない!!
スーパー編集長からスーパー編集者へと変身した瞬間だ。
小笠原に
「平泉で1日取材してくるよ」
「いいですね〜。撮るんですよね?」
「うん、撮って書いちゃうよーん」

機材一式を背負い込み、
イベントが主たる目的であったはずの岩手出張に出かけた。
無事にイベントを終え、仲間と別れて
一関に安宿をとって翌日に備えた。

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