最新コンパクトデジカメの実力を知るべく、レビューをお届けしている。今回は前回に引き続き、『カシオ EXILIM EX-ZR100』の撮影レビューをお届けしよう。今回は本機の大きな特徴であるHDR撮影についてレビューしたい。
HDR撮影とは「ハイダイナミックレンジ」の略で、1度の撮影で露出の異なる画像を撮影し、それらを高速合成することによって画面全体を適性補正内に収めるというもの。要は影の部分が暗くつぶれたり、照明などが白くとんだりするのを防いでくれるというわけだ。これによって本機は、35mmネガフィルムに迫る圧倒的なハイダイナミックレンジを再現しているという。たとえ被写体が動いていても、連写画像の中から合成に適した部分のみをカメラが自動で抽出し、画像合成と処理を実行するというから驚く。
また、本機では“HDRアート”という機能も搭載。これはHDRの技術を用いて、局所的な彩度やコントラストの強弱を調整することで、新しい写真表現を創り出すモードで、これで撮影するとまるでラッセンの絵画のような表現となる。
編集部では、早速このHDR撮影を試してみた。“絞り優先モード”、“HDR撮影モード”、“HDRアート撮影モード”の3つの画像を同位置から三脚を使用して撮影している。画角が若干異なるのは、HDRモードにすると画面周辺部分がなぜか切り取られるせいだ。もちろん、無補正状態である。まずは編集部にほど近い東京タワー。芝公園すぐそばから撮影した。
フォーカスはすべて画面中央部分である。絞り優先ではほぼシルエット状になっている木々だが、HDRモードでは木々の陰影が表現されている。また、画像右の街灯周辺がHDRではきちんと描写されているのがわかる。実際の感覚でも、HDRのほうが見たままに近いように思う。
大門側から撮影した東京タワー。この写真のフォーカスはすべて東京タワー中央部分である。絞り優先モードでは白トビのある東京タワーだが、HDRでは鉄骨がキチンと描写されている他、画像左隅の店舗のネオンも読み取れる程度に描写されている。
浅草雷門である。フォーカスは「雷門」の文字の辺り。絞り優先モードのほうが雷門の赤が鮮やかに出ているが、照明が当たっていない部分は黒くツブレている。HDRでは石畳や周辺の建物まで見えるが、雷門自体はやや朱色がかった色味となっている。
浅草秘密基地の開催会場である浅草フィガロの外観。右にある看板、店の入口にあるメニュー、三角屋根部分の店舗ロゴなどの描写に違いが出ている。楽しい宴の様子もHDRモードで撮影してみた。
以上のように、夜景では概ねHDR撮影が有効に機能するようだ。今回は雷門の赤の色合いでやや彩度に影響があることがわかったが、他の場面でどう見えるのかはもう少し使い込んでみなければ評価できないだろう。このHDRは従来オペレーターが手作業で行っていた作業をある自動かつ瞬時に行なってくれるという点で画期的だし、夜景を始めとする明暗差の強い場面での撮影では大変有効な手法だ。すでにリコーやソニー、ペンタックス、キヤノンなどが内部で自動的に合成処理を行うデジタルカメラを発売しており、iPhone 4でも採用されているそうだ。少なくとも本機では明暗差のある撮影では十分に実用的といえる。なんともすごい時代になったものだ。
一方で“HDRアート”については、確かに絵画的な不思議な画像を撮影することはできるが、これをどんな場面で活用すべきシチュエーションが今ひとつ曖昧というのが正直な印象。現在のところはおもしろい写真をとることができるというぐらいの機能と思っておけばいいかもしれない。
ということで、今回はZR100のHDR撮影のレビューをお送りした。次回はまた違った視点からレポートをお送りすることにしたい。
◆副編集長:小笠原
コンパクトデジカメ歴は10年前のサンヨー製200万画素のモデル『DSC-MZ2』購入が最初で最後。取材にはキャノンの中級機『EOS 50D』を愛用中。