今年も年に一度の定点観測取材に出かけてきた。終戦記念日の正午は靖国神社で迎えることにしていて、もう随分と長いこと欠かしていない。取材としたのは、ここに訪れる人たちの年齢層や表情、街に起こっている喧騒などから、現在における先の戦争を考察するように過ごすからだ。考察といっても、何か言葉にしてこうだと言えるところまで持っていくことはしない。この瞬間を感じることを自分の中にストックして、日常で得ていく情報とのミックスで自分の発言や行動に持っていきたい。だから今日もただ素直に感じ取りながら、心のシャッターを切るように自分の中に取り込んできたつもりだ。
台風の影響だろうか、去年より並んだ時間は短く、35分で手を合わせることができた。行列の中で正午が近づいてきて、居合わせた者たちとで君が代の合唱になり、やがて1分間の黙とうとなる。小さな子供とセミ以外、音を発していない静寂の1分は平和への祈りとご先祖様への敬意であふれていた。
「我々が今こうして平和を享受できているのは、ご英霊の皆さまがたのおかげです。感謝の気持ちを決して忘れることなく、未来永劫我が国が平和であることを祈念します」と、ここに集った誰もが胸の中でそのような言葉を述べ、深く祈りを捧げている。この1分の静寂は、毎年のことながら実に清々しい1分である。
多くの尊い命が散っていった。これを無駄にしないために、平和を続けていかなければならぬ。そのために、今を生きる我々が何らかの行動をせねばならぬ。「微力ながら努力を怠らずに邁進してまいります」と誓い、今年も会社へと戻った。ずっと変わらない365分の1日が今日も過ぎていき、またこの1年を平和に向けて新たな気持ちで歩んでいきたい。