国民的歌番組、「NHK紅白歌合戦」(以下、紅白)は今年令和元年の大晦日の70回目という節目を迎えます。近年ではかつてのような視聴率を獲得できず、人気が低迷していると言われていますが、昭和40年男世代の幼少期~青年期は、ほとんどの国民がテレビにくぎづけになったほど! そんな紅白の出場リストから、その年のヒット曲や話題の歌手を振り返ってみましょう。第6回目は、悲しい失恋をさわやかに歌い上げた「木綿のハンカチーフ」で太田裕美が初出場を果たした、 昭和51年・第27回大会です。
「地方受け、熟年層受け」のNHKと世論のギャップ
この年、「およげ!たいやきくん」がオリコン史上最高の460万枚の売り上げを記録したにもかかわらず、子門真人が出場歌手に選ばれなかったことが大きな波紋を呼びました。アンケート投票は「歌手名」で行われるため、楽曲が有名になっても、その歌手自体に投票が集まらないと選出されないという、なんとも苦しいコメント。さらに、人気のフォーク・ニューミュージック系歌手も「その人気のほとんどが10~20代ばかり」という理由で見送られ、レコード大賞新人賞レースを争った、「思い出ぼろぼろ」の内藤やす子と、「嫁に来ないか」の新沼謙治の場合も、岩手県出身の新沼謙治のキャラが地方受けするということもあって、内藤やす子が涙をのみました。このように、当時は今以上に、NHKの選考基準は、「人気」や「ブーム」とは少し違う視点で出場者を選んでいたというのが、誰の目にも顕著に見えた年でした。
遠距離恋愛を描いた失恋ソングが大ヒット!
前年にレコード大賞新人賞を受賞した太田裕美の4thシングル「木綿のハンカチーフ」(75年12月発売)が、あの「たいやきくん」の陰で、累計150万枚のセールスを記録。紅白初出場を果たしました。作詞:松本 隆/作曲:筒美京平による、永遠の定番失恋ソングとも言えるこの曲は、今も世代を超えて歌い継がれています。離れて暮らす恋人が、都会での暮らしのなか、少しづつ遠くにいってしまう切なさをさわやかに表現した名曲ですね。
異色歌手が不在?
昨年初出場した、ずうとるびやダウンタウン・ブギウギ・バンドなどの異色グループはそろって落選。この年、8月に「ペッパー警部」で鮮烈的なデビューしたピンク・レディーは、レコ大新人賞を受賞するも、その振り付けなどがセクシーすぎたためか?異色歌手扱いされたのか?デビュー年の出場は叶いませんでした。3回目の出場である殿さまキングスは、すでに異色ではなく正統派演歌グループという位置づけになってきており、紅組・白組ともに、出場歌手の話題性という部分では、やや寂しいという印象もあった年となりました。そんななか、宇崎竜童・阿木燿子コンビの「横須賀ストーリー」で新境地を拓き、人気を不動のものとした山口百恵が、紅組のトップバッターとして、あらためてイメージ一新したその存在感を示しました。
そして昭和40年男的には、紅白とはほぼ無縁ながら、忘れられないヒット曲(?)があります! 人気バラエティ番組『8時だョ!全員集合』で志村けんが歌った「志村けんの全員集合 東村山音頭」です。この2年前にドリフターズの正式メンバーに加入した志村けんのブレイクのきっかけとなったものですが、当時は本当に「東村山音頭」という曲(歌詞もメロディも異なる)があることを知らない子供たちも多いなかでのブームに地元・東村山市もびっくり!市長から感謝状が贈られたというエピソードが微笑ましいです。
※当時のレコードジャケットなどは、「昭和40年男」6月号増刊「俺たちの胸に刺さった昭和ソング」P16~17に掲載されていますので、あわせてご覧下さい。(「昭和40年男」編集部・まつざき)