隔月発行を続けている増刊に、多くの意見が寄せられている。どうやらぼちぼち好評のようでホッとしている今日だ。てな訳で『俺たちの胸に刺さった 昭和ソング』について、僕の思いなんか綴らせていただこう。
今回1セクションを作り、書き下ろしページを突っ込んだ昭和53年は、タイトルした通り奇跡だ。古今東西、いつの時代も世の中は動いている。でもこの年の日本歌謡界に起こった諸々は革命と言っていいと僕は感じている。その中心にあるのが『ザ・ベストテン』で、この番組がもたらした影響は凄まじい。まだガキだった僕らにもわかりやすく“やる気”を感じさせてくれた。これ以外の歌謡番組が、やる気の無いわけじゃもちろん無いのだが、『ザ・ベストテン』にはこれでもかっという熱があまりにも多く入り込んでいた。結果、世の中が歌謡曲に求める期待が大きくなり、百花繚乱時代を加速させた。
ちなみに今回の雑誌名を昭和歌謡でなくソングにしたのは、この53年が大きかったりする。それ以前に活躍した存在を歌謡曲と呼ぶのはわりとしっくりくるが、この年を象徴する存在の世良さんや原田真二さん、ゴダイゴなんかは歌謡曲と呼べない気がしたのだ。今回の増刊では、ポプコン特集の時のコンテンツも多く入れ込んであり、あそこの出身者たちも歌謡曲と呼ぶには違和感がある。そんなわけでソングにしたのだが、ソングスにしなかったのはNHKの番組のせいであるのは言うまでもなかろう。
ではこの年のヒット曲から1曲を選べと言われたら? やはり僕は『勝手にシンドバッド』を選ぶ。当時、後に現在ほどの地位を築くとは予想できなかったが、衝撃の大きさだけは今もしっかりと記憶されている。そんな彼らとの出会いも『ザ・ベストテン』なのだから、やはりモンスター番組である。そして不思議なことに、この昭和の大名曲『勝手にシンドバッド』は昭和歌謡といってもあまり違和感がない。この後のサザンや桑田さんの活躍あってのものだが、去年の紅白歌合戦でひばりさんに追いついたと感じさせた桑田さんだからこそなのだろう。そのまんま、昭和ソングの代表曲とも言い切る僕である。