国民的歌番組、「NHK紅白歌合戦」(以下、紅白)は今年令和元年の大晦日で70回目という節目を迎えます。近年ではかつてのような視聴率を獲得できず、人気が低迷していると言われていますが、昭和40年男世代の幼少期~青年期は、ほとんどの国民がテレビにくぎづけになったほど! そんな紅白の出場リストから、その年のヒット曲や話題の歌手を振り返ってみましょう。第2回目は昭和47年、最高視聴率80.6%を獲得した第23回大会です。
天地真理が初出場!本格的なアイドル時代到来か?
前年にデビューした天地真理が、この年大ブレイク! 同期で昨年初出場を果たしている、小柳ルミ子、南 沙織に後れをとったかと思われましたが、この年の真理ちゃん人気はすさまじいものでした。「ちいさな恋」「ひとりじゃないの」「虹をわたって」が3曲連続でオリコン1位を獲得し、日本レコード大賞の大衆賞を受賞。その受賞曲となった「ひとりじゃないの」で紅組のトップバターを務めました。
一方の白組は前年トリだった森 進一がトップバッターと意外な対戦組み合わせとなりましたが、いわゆる男性アイドルの草分け的存在と言える野口五郎がデビューから6枚目のシングル「めぐり逢う青春」で初出場を飾るなど、アイドル時代の到来を漂わせていました。アイドルといえば、GSブーム終焉で前年ソロデビューをした沢田研二も初出場。ザ・タイガースでの実績があるジュリーは、初出場ながら赤組の対戦相手がレコード大賞「喝采」のちあきなおみ。後のスーパースターぶりを予感させる歌唱を披露しました。
そしてこの年は、山本リンダが「どうにもとまらない」で大胆なイメージチェンジをはかり、見事に曲は大ヒット、5年ぶりの復活も注目となりました。「こまっちゃうな~♪」のカワイコちゃん歌手が、まさかのへそ出しルックで再起を果たしましたが、まだ幼かった昭和40年男世代には、カッコいいというよりは、驚きおののいた人もいたのでは? とにもかくにも、5年ぶり2回目となる山本リンダの再出場に熱い視線が注がれたことは間違いなかったでしょう。
白組の注目はといえば、フォークの兄弟デュオ、ビリー・バンバンではないでしょうか。メジャーデビュー3年、10曲めのシングルが日本テレビ系のドラマ『3丁目4番地』の主題歌となり20万枚を売り上げる大ヒットになり初出場! 昨年来のフォークブームがさらにお茶の間に浸透する大きなきっかけとなったのが、この「さよならをするために」。今なお歌い継がれる永遠の名曲です。そして、同じくドラマからヒットしたのが、青い三角定規が歌う「太陽がくれた季節」、メインボーカルのクーコが女性なのに、なぜか白組として出場というのが違和感ありありでした。この曲は『飛び出せ!青春』(日テレ系)の主題歌で、どちらも民放のドラマからヒットした歌がNHKの紅白で歌われるということでも注目されました。
テレビがスターを作り始めた
札幌五輪、あさま山荘事件、沖縄返還、パンダ来日と大きなニュースが相次いだこの年は、まさにテレビがお茶の間に欠かせない存在となり、そこから数多くのヒット曲や学園ドラマの青春スターが生まれました。前年に始まったオーディション番組『スター誕生!』からのデビュー第一号・森 昌子の登場はまさにテレビがアイドルを生み出した典型。翌年以降、ここから実に数多くのスターが誕生しました。一方で、家庭でのステレオ普及率は40%を突破し、テレビやラジオ以外でも音楽を楽しむ時代となり、「俺たちの胸に刺さった昭和ソング」は、急速に広がりをみせていくのでした。
※当時のレコードジャケットなどは、「昭和40年男」6月号増刊「俺たちの胸に刺さった昭和ソング」P8~9に掲載されていますので、あわせてご覧下さい。(「昭和40年男」編集部・まつざき)