梅の香りで春が始まり、桃やコブシ、モクレンあたりが続き主役の桜が咲き乱れる。異常気象が叫ばれているがどっこい進行キープしているじゃないか。そしてツツジやサツキが初夏を連れて来た。今年の5月は気温の高くて、情報バラエティではいちいち騒いでいるが、ここでも花たちはキチンと5月を盛り上げた。そして暦は早いものでもう6月。花はアジサイへとバトンタッチした。
家から駅に向かう道で目を奪われるのがこのアジサイだ。ちょっと古い民家の軒先に咲いていて、毎年楽しませてもらっている。この場所の薄暗い感じが悪くない。雨降りでも風情を発揮するのがアジサイで、初夏と真夏の間をうまく埋めてくれている。ともかく、この薄暗さや雨が似合う花ってのはそうそうない。
アジサイにまつわる句を探してみた。松尾芭蕉は、
紫陽草や藪を小庭の別座鋪
と詠んだ。芭蕉が51歳の時の句だそうで、旅に出る送別の席で読んだとのこと。手入れが行き届いているわけでない小庭にアジサイが凛と花をつけている。この軒先で花をつけている感じとシンクロする。そして正岡子規は、
紫陽花や壁のくづれをしぶく雨
崩れている壁というのがバッチリ効いていて、しかもしぶくような雨振りでも子規はアジサイに目を奪われている。この2つの句から浮かぶ絵と、僕が大好きな軒先のアジサイはシンクロするじゃないか。正しいアジサイ(!?)なのだと、2人の俳人によって知らされた気分になった。明日よりはさらに深く愛する気がする。やがてくる梅雨もまた、いとおかしである。