先日、上野で打ち合わせがあり「まだ営業しているかなあ」と半ば諦め気味に行ったらどっこい元気に営業していた。どっぷりと昭和なままなのがうれしい喫茶店である。
残念ながら食事の後だったから、茶店の定番ナポリタンセットを頼めなかったのが残念でならない。実はこの茶店はアルバイトに応募して落ちた店だ。高校2年生の頃だった記憶している。髪の毛が長くて面接もろくにしゃべれず全然ダメだったこともセットになった記憶だ。でもこの店が嫌いにならず、割とちょくちょく利用した。友達と散々議論したり、女の子と話し込んだり昭和の想い出がどっさりある店だ。
今はすっかり減ってしまったが、かつてはこんな味のある茶店が多かった。コーヒーにこだわる店、こじんまりしてマスターがかっちょいい店、そしてモーニングやランチが充実している店と、それぞれに色があった。多くの茶店にとってスパゲッティは定番中の定番で、当時はナポリタンとミートソースしかなかった。写真にもあるような遠慮がちなサラダと飲み物のセットで600円とかそんな感じだったなあ。油たっぷりで炒めてあって、食い終わると皿がピカピカだ。若いからそんなのがたまらなく好きで、えらいご馳走だった。
高校生だった俺たちは、茶店の評価を共有していた。あそこのナポリタンは上手いとか、セットが安いとか、制服でタバコが吸えるとか(笑)。高校生にとって茶店とは極めて重要な社交スペースだったから、そんな風に評価を言い合ってはワクワクドキドキしながら利用していた。今もネットの中にはグルメ情報があふれているけど、当時の口コミとは明らかに異なる。多くの人が寄せる投稿には愛よりも批判めいたものばかりが目立っていて、げんなりするから僕は見ない。美味しくないけど味のあるナポリタンのように、俺たち世代はそんな情緒を愛せた。昭和の茶店がチェーン店に次々と駆逐されていくように、情緒なんかじゃ現代は成り立たないのである。と、思わされることは多いが、このギャランさんのようにどっこい繁盛しているところもたくさんある。俺たちはこんな文化遺産(!?)を後世に残すために、見つけたら積極的に利用しましょう!!