先日松山でイベントがあり、その終了後はささやかなご褒美で松山に泊まることにした。どうせなら道後温泉に宿を取って、ひとっ風呂浴びようと出かけた。目指すは本館と呼ばれる、国の重要文化財にも指定されているここだ。が、この状態で聞けば1日中長蛇の列だとのこと。1時間以上待つとのことで断念した。さらに聞けば、朝6時から営業しているものの、それ以前から長蛇の列になるとのことだ。結局我々スタッフは、安宿にある温泉でない普通の風呂に浸かったのである。
休みが1日も取れないゴールデンウィークのせめてものオアシスだったのに、残念無念である。気を取り直して路面電車に乗って、飯くらいはせめてと繰り出したが、風情ある店はほとんどがお休みだった。日曜定休の店が多く、チェーン店や観光客向けの面白くない店ばかりだった。仕方なくそのひとつに入ると、思った通りの愛想のない兄ちゃんたちの接客と工夫のない料理で過ごした。
地方都市に行くとチェーン店や大資本の無味無臭な飲食店の侵食が激しく、風景までもが無個性なところによく出くわす。中心地からちょっと離れた国道なんかもよく見かける店ばかりが並び、どでかいショッピングモールの近くにはシャッターストリートが伸びている。と、そんなところに出くわすたびにため息をつく。仕方ない。便利で安さを求めるのは当たり前のことで、個人店がそれに立ち向かうことは超越した武器がなければ無理だ。普通においしいレベルの店は生き残れないのだ。が、そんな普通のところに人情や地元色が濃く出たりするのに、それを求めるのはおっさんばかりでニーズが低いから駆逐されていく。だから僕は、地方に出かけるといつも傾きかけた店を探しては入る(笑)。
道後温泉本館は何度か訪れている僕で、お湯はもちろん建造物としても感動的である。戦争末期に大空襲があったそうだが、よくぞ残ったものだ。まさしく武器であり、街の個性をドーンと演出してくれる。松山城というこれまた強い武器があり、観光資源は満載である。街は侵食されているとはしたが、どっこい古き良き香りもまだ多く残っている。このあたりで止まってほしいと切に願う。そして次こそは温泉に浸かりたいと願ってしまう、あたり前のことが当たり前でなかった道後だった。