忘れ物はなんですか?

「ない、僕のカワイイiPhoneはどこ行った?」 8耐取材のあとの宿泊先でのことだった。考えられるのは鈴鹿サーキットのプレスルームで、まだ会場に残っている仲間に連絡を取り探してもらうという失態を演じたが、僕たちが座った席付近になく、事務局にも届いていないとのこと。とにかく利用停止した方がいいと勧められ、センターに連絡してみると今度は情けないことに暗証番号がわからん。さまざまな苦労を乗り越えてやっとのこと、利用を停止できた。なんのこたーない。翌日クルマの荷台にあった。かすかな記憶に残っていたのは、長く厳しい取材を終えそれをつぶやこうとリュックからiPhoneを取り出したこと。取り出してちょこっと荷台に置いて、他の荷物を積み込んでいるうちにその行動を忘れていた。なんかさ、ひどい物忘れ具合だね。

「ない、僕の大切な手帳がない」。これもつい最近のこと、イベントの仕事で行った滋賀県の宿泊先でのことだった。前夜、スタッフ同士で呑みに行くことになり、最近物忘れがひどいからと、わざわざ手帳をカバンに入れて出かけた。手帳だけを持ち歩くという習慣がないから、酔っぱらって忘れてしまうと懸念したのだ。カバンだったらいつだって持ち歩くものであるから大丈夫だと突っ込んで、物忘れ対策したつもりだった。そもそも呑みに行くのになんで手帳を持ち歩くのかというものだが、これはメディアの仕事に就くものの習性である。なにか面白いことや、その地の名物の話などが聞けたらメモに取る。スゴイ方と出会ったら名刺を渡す。などなどのために最低限の必要ツールなのである。記憶をたどると、呑み屋で手帳を広げたような気が。そこでそのままテープルに置いてきてしまったのだ。やはりその通りで、呑み屋の方のご好意で送ってくれることになったからよかったものの、岐阜からの長旅をする手帳君を受け取るまで、予定を組めない期間となった。その週は取材ウィークにしていたから、細かなアポがたまたま入っておらず、人様に迷惑はかからなかったが、翌週のスケジュールに関して記憶が曖昧なまま震えながら過ごしたという、スーパーハイパービジネスマシーンな僕にはつらい日々だった。

「ない、メガネがない」×2。「ない、コンタクトがない」×1。今年に入ってそんな忘れ物をカウントしていて、その度ホテルから着払いで送ってもらう出費を重ねていて反省していたところだった。今回のiPhone事件は胸を撫で下ろしながらも、自らのダメダメぶりにちょっと落胆である。加齢で済ませてしまうのか? いやいや、不注意だ。決して年齢ではないと葛藤の中にいる。

メガネとコンタクトを置き忘れたのはホテルだったから、送ることに慣れていて対応が早い。呑み屋さんにとって忘れ物は取りに来るものであり、送ることにあまり慣れていないのだろう、待てど暮らせど届かず、1週間を経て恐縮ながら電話をとった。そしてこんなやり取りが展開された。
  「あのー、1週間前に手帳を忘れた北村と申します」
  「ああーっ、すいませんおそくなってしまって。もう届くと思いますよ」
  「そうですか、ありがとうございます」
  「あっ、一応住所を確認させてもらえますか?」
「?」と首を傾げながら住所を伝える僕である。この日からさらに5日が過ぎた日に、大切な手帳は長い旅を終えて僕の元に戻ってきた。実に12日ぶりの再開だったのである。蕎麦屋の出前? 飲食店というのは古今東西そうなのだ。ハッハッハ。

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