平成最後に昭和の最後!? 〜大編集後記。

連載特集の『夢、あふれていた俺たちの時代。』は、大好評いただいている昭和の一年を切り取った特集だ。うっすらとだが記憶の数々が残っている昭和46年から63年の間を行ったり来たり、現在3回り目になっている長寿特集なのだ。当初予定していたのは今回取り上げた昭和63年でなかったが、“平成最後” という耳にタコなキャッチフレーズがまとわりつき、だったら平成最後に昭和最後の年を取り上げようと変更したのだ。

 


てなわけで、昭和最後の63年を取り上げて今回もアレコレ綴っている。Winkがデビューしたのがこの年だったのかと、あの不思議アイドルをあらためて思い出した。当時、上野の居酒屋でバイトしていた僕は有線から流れてくる抑揚の少ない歌に興味を持った。そしてある休みの日、その姿をテレビで見て抑揚がないのは歌だけでなく存在そのものなんだと知った。それまで見てきたどんなアイドルとも異なり、時代の変化を強く感じたのだった。言葉にしづらいが、バブル景気と絶妙なバランスでかみ合っている気がした。プロジェクトの司令塔が天才だったと、インタビューに応じてくれたのはWinkの詞を多く手掛けた及川眠子さんで、不思議アイドルが世に放たれた背景を語ってくれている。

 

昭和63年といえば、大学にストレートで行ったタメ年諸氏が就職をした年だ。音楽に夢を描きながら居酒屋で汗を流している僕に、就職して社会の波に揉まれ始めたばかりの同級生が「北さんはいいよな」と言い放った。それは言葉とはまったく異なる、上から目線の勝ち誇った気持ちの表れだった。強い屈辱を感じたものの、見果てぬ夢にうつつを抜かしているのは事実だったのだから仕方ない。Winkと聞くとあの日の悔しさと直結するのは、舞台が居酒屋で結ばれているからだろう。

 

あの年後半からの自粛ムードもまた記憶に強く残っている。これも今回は記事にしているから注目だ。平成最後の『昭和40年男』が取り上げた昭和最後の年は読み応え満点だぞ。そして元号が変わって一発目となる次号 (vol.55) の『夢、あふれていた俺たちの時代。』で、我々が何年を取り上げるかご注目だ。いやいや、そんな先の話よりも、まずは最新号 (vol.54) を手に取ってくれっ!!
 

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