発売直後は僕による恒例の大編集後記を綴らせてもらっている。2日ほど番外編としたが今日は元に戻して、巻頭特集の締めといかせていただく。
さまざまなつらい男を取り上げた長い巻頭特集の最終セクションに、寅さんを持ってきた。このセクションこそがメインコンテンツであり、13ページもの大ボリュームとなっている。その最後の最後で、大トリを飾るのがこの素晴らしい写真で構成した2ページだ。昭和19年生まれには見えない若々しさで、惚れ惚れする。ご存知博を演じた前田 吟さんの登場だ。
『男はつらいよ』は生き生きとしたキャラクターが多く、それぞれが引っ張り合うように魅力を放つ。博は、さくらやタコ社長、そして寅さんとの絡みで物語を引っ張り続けた。極めて重要な場面を演じ、その存在はなくてはならない。
ちょっと脱線するが、クイーンはあの4人が引っ張り合いながらバンドの魅力を確立させた。4人がそれぞれの個性を出し切っているからこそ、高いテンションを保ち続ける。『男はつらいよ』を観ていると、キャラ同士の魅力の引き出し合いが、まるでクイーンのように感じる。もしも博がいなかったら、おいちゃんがいなかったら、さくらが…とか、重要すぎる存在が何人もいることは奇跡のようであり、それが長年にわたって日本中に愛された要因の一つだろう。
博という存在と寅さんについてを、演じたからこその言葉で投げかけてくれる。まるで映画の博さながらに、冷静ながら重要な言葉の数々が泣けてくるぞ。
おそらく、寅さんに対してなんの興味もないという同世代諸氏も少なくなかろう。テレビで父親が見ているのを、どこがおもしろいんだと思いそのまま今に至っているという声を聞くことがある。そう、ガキにはわからない味や人生の教訓が『男はつらいよ』にはどっちゃりと詰まっているのだ。興味がないまま今日まで来てしまった諸氏は、騙されたと思って1本手を伸ばしていただきたい。P66に名作5選が掲載されているから、ここから選べば間違いなしだ。おっとその前に、まだ最新号を手にしていない方はすぐに書店へと走ってくれっ!!