今回の特集は大好きな仕上がりになった。だってね、ついに寅さんを大々的にフューチャーできたのだもの。10周年記念イヤーのど頭を飾るにふさわしく、正月映画の雰囲気までも味わっていただきたい。
僕がカラオケの締めで最もよく歌うのが『男はつらいよ』だ。小っ恥ずかしいけどセリフもキメる。何度歌っても目方で男が買えるならの部分と腹で泣くの部分で涙が出そうになっちまう。DVDも全部持っていて、いつか1日3本立てなんてバカなことを夢見ている。
これまで寅さんはほとんど取り上げていない。国民的と呼ばれるものは極力避けているのだ。というのも“俺たち感”が損なわれるから。これは常に留意していることで、例えば野球における王・長嶋のような存在を極力避けている。だが今回の特集は、54歳を迎える年に自分自身が相当につらくなってきているとのリアルから入って、でも俺たちにはやせ我慢や粋でいなせの美学が備わっているのだからぶっ飛ばしていこうという特集の骨子を固めた。この骨子にピタリとはまるのは寅さん以外にいないし、渥美清さん自身にも透けて見えてくる。このように考え満を持しての登場となったのだ、えっへん。
ならばなぜ表紙&巻頭でないのか。そこはやはり僕の奥ゆかしさですな(笑)。メインコンテンツだからこそ控えめに見えつつも存在感が醸し出せるアンカーにした。紅白で言えば大トリだ。しかも僕としては初となる特集内トビラ(導入となるページ・上記)を付けたのだ。これもいい写真じゃないか。寅さんへの心からの愛がついつい出た展開だ。そしてなんと、この特集をご覧になった山田洋次先生が褒めてくださったと伝わってきた。身にあまる光栄でござります。