11日発売のvol.53が完成して今朝会社に届けられた。今年の勝負がいよいよ始まるのだ。風邪っぴきの松崎が今日やっと出てきて、編集部が今年初顔合わせになり、今年もがんばろうと気合を入れた。
うちの会社にとって初荷となった最新号だ。僕の育った実家は電器屋を営んでいたから、初荷はちょっとしたイベントだった。2社の取り扱いメーカーが、初荷と書かれた赤い札が貼ってある冷蔵庫やらテレビやらを押し込み強盗のごとく置いていく。エリアの担当営業の方が団結して一斉に巡るから、結構な人数の押し込み強盗だ(笑)。店内にはお屠蘇を用意して皆さんに振る舞う。しばし談笑すると我が家の家族全員と、地区の担当全員で店頭に円陣を組み、担当営業の掛け声で手締めする。メーカーのはっぴを着込んだ男たちが大声で北村テレビ商会の商売繁盛をご近所にアピールをするのだ。くすぐったいような、恥ずかしいような気分ながら悪くない行事だった。
31日の紅白歌合戦まで営業を続けた店は、毎年4日までお休みになる。昭和の商店はどこもそんな感じだった。コンビニがなかった時代、薬屋も果物屋も石油屋も、大晦日は11時過ぎまで店を開けていた。そして翌日から寿司屋と美容室以外のすべての店は閉まり街はひっそりとする。その静寂を5日の初荷によってまるで目を覚まされるがごとくである。
そんな風景を見なくなって久しい。元気な商店街を見つけるのは難しく、ましてや電気屋なんざネット販売の時代以前に、大型量販店の時代に大打撃を食らった。自治のごとく、ご近所の商店同士で生活を支え合っていた時代と街を経験できたことは、昭和の記憶の中にある宝物である。