この扉を開ける勇気はあるか? 怪しいにもほどがあるとでも言ったらいいだろうか? しかもここは地下1階である。老若男女を吸い込むビッグシティ、渋谷にこの扉は似合わない感じだが、呑み屋を探す嗅覚に優れる僕がこの扉を開けないわけがない。そして開けたらそこはパラダイスだった。
ここは渋谷駅から歩いてすぐの山形という居酒屋だ。だだっ広い店内は80年代が懐かしいカラオケパブの雰囲気で、回っていないミラーボールがいい味出している。低いテーブルにかつてはゴージャスだった椅子が並び、居抜きのそのまんまで使っているイメージだ。だがメニューは完全に居酒屋で、店名通り山形の名物料理の芋煮や玉こんにゃくなど実にうまい。次々と訪れる客は皆この雰囲気を楽しんでいて、雰囲気がすこぶるいい。都会のど真ん中と思えない異空間だ。
先日、5人で行き全員が芋焼酎のロックをオーダーすると一升の紙パックを持ってきて、5人だったら呑めちゃうからと言いながらドボドボと注ぐじゃないか。おばちゃん、多分おかみさんだと思うがその笑顔に誰もかなわない。一同ガハハと笑いながら次々と焼酎をのどに流した。他のテーブル同様、我々も終始笑いの絶えない席になった。
酒席ってのは人の噂話や陰口に話が及びがちだが、この店だときっとそうなりづらい。開放的で明るい雰囲気はジメジメした話が似合わないのだ。忘年会くらいは来年に向けての明るい話に終始したいとの貴兄に、自信を持ってお勧めできる。同じ店名の渋い居酒屋もすぐ近くにあり、そちらはサシ呑みにお勧めだ。グループだったらこちらの大ホール版山形に行くべし。マークシティ界隈にあるからすぐに見つかるだろう。ぜひっ。