今日は(も)そばでも食うかとブラブラと歩いているとこの看板を見つけた。ガツンとランチとはいいコピーである。『昭和40年男』の連載企画に『ガツン!と一言。兄貴の説教』なんてのがあることでもお分かりいただけるだろう、僕はガツン好きなのだ。吸い寄せられるように店に入った。
看板のとおり、メニューは2種類でスパカツなる釧路のソウルフードは初めて知り迷った。ミートソースとカツとはなんとも豪勢であり、ナポリタンと同額ってのはいったらカツカレーとカレーが同じプライスとほぼ同じ感覚だ。さんざん悩んだが気分はナポリタンで、スパカツはもっとガツンと勝負したい日の楽しみに取っておくことにした。
俺たちにパスタなんて言葉は似合わない。昭和のおっさんはスパゲッティである。選択肢も当時はふたつしかなく、ミートソースとナポリタンだった。突如、たらことか納豆とか加わってきて、クリームやトマトソースなんてのもラインナップしたスパゲッティ屋が街を賑わしたのはハイティーンの頃だった。100種類以上のラインナップを誇るところも多くあって、ご存知の方はいるだろうか、僕は渋谷のポイントテンという店が大好きだった。でもここでも僕の選択はミートソースで、彼女がオーダーするナウでヤングなスパゲッティを少し分けてもらい、新しい味にうなづきながらもやっぱりミートソースだぜと一途だった。
ガキの頃、ナポリタンはミートソースが面倒な時の代用品といった扱いで、ミートソースに比べたらテンションは上がらないメニューだった。でもなぜか大人になってからだ、この味が食いたくなることが増えた。ウインナーと玉ねぎとピーマンで甘ったるい味のこいつが、よく考えるとなぜうまく感じるのだろう。欲を言えば缶詰のマッシュルームを入れていただきたいところだが、粉チーズとタバスコをそれこそガツンと振りかけて食うチープな味は、おっさんのハートを撃ち抜く。
我が家ではトマトソースが常に冷凍してあって、スパゲッティといえばもっぱらこれだ。アサリの旬の時期はボンゴレが登場し、大晦日はひき肉を2㎏以上使って元旦までコトコトとミートソースを煮込む。家で好んで食うことはまずないメニューであり、ガキの頃はテンションがイマイチ上がらないメニューだったにもかかわらず、大人になって食うことが増えた。この日のように不意に出くわしてつい食っていることが多い、不思議なメニューである。皆さんは、どんなスパゲッティライフをお過ごしだろう? ナポリタンにどんな思いがあるだろう? 同世代諸氏の嗜好が気になる今日だ。