「食べ物は絶対に残しちゃダメ」とは、戦中に生まれ戦後の貧しさをイヤというほど味わったお袋の口癖だ。僕の中にしっかりと染み付いていて、どんな場面でも平らげるように心がけている。その精神が僕を苦しめたある日の出来事だ。
会社の近所に新しいラーメン屋ができて、何の知識もなく誘われるように入った。二郎とか家系の味を知らないおっさんなのは、聞く噂で無理だとわかっているからだ。なのについにやられてしまった。PCに店名を打ち込むと、どうやらこの店は二郎さんに似ているとのこと。今時 (!?) のラーメンを体験したことになる。
店内に入った瞬間の香りで豚骨の濃いスープは予想できたが、いらっしゃいませの声がけに逃げることができなかった。仕方なく販売機でラーメンのチケットを買って待つことしばし。周りの人の丼には野菜が山と積まれていて、僕は心の中で「やばいところに来ちまった」とすでに後悔していた。次々と出てくる丼は山盛りばかりで「僕のがあんなだったらどうすりゃいいんだ」とビクビクしながらも、後の入った人が野菜を追加するようにオーダーしているのを見て、ほんの少しだけ安心して待つことができた。しばし待った後に出てきたのは、僕のこれまでの人生を否定するかのような一杯だった。恐る恐ると野菜を頬張る。こんな非常事態だってのにベジファーストを守るおっさんに我ながら悲哀を感じる。そしてこの時点でもう逃げることばかりを考えつつ、お袋の声がまるで聞こえてくるようだ。「明広、食べ物は絶対に残しちゃダメ、大切にね」
麺をつかむ。このスープにレンゲは使わない。できるだけスープを切って麺を食べたいと考えながら頬張ると硬い。太くて硬くてやはり僕には理解不能なのだが、周囲の方々はうまそう食っている。ギャル2人もキャッキャっと喜んでいるじゃないか。この現象なのだから、残念ながら僕の舌と嗜好が狂っていることになる。さあ、どう対策しようかと胡椒をかけたり唐辛子系の赤い粉末を入れてみた。が、食べづらさは全く変化なし。そうだ、酢を入れればスッキリするぞと入れた。少しの変化はあったものの、でもそもそもベースの濃さは変わらないのである。「無理だ」ギブアップの声が心の底から聞こえてきた。でもさらに僕を悲劇のどん底へと追い込むのが、丼はカウンターに返せと書いてあるこの店のルールだ。さらにさらに、店をオペレートする2人のうち、偉そうにしている兄ちゃんの真ん前に僕は座っている。懸命に働いている兄ちゃんにたっぷりと残った丼を返すのは申し訳なさすぎる。箸を懸命に出すものの、本能なのかつかむ麺は1本だ。嫌な感じの脂汗が出てきた。1本ずつすすっているおっさんに兄ちゃんは気づいただろうか。こうなると僕は何のためにここにいるのかわからなくなる。そしてお袋の声は何度も何度もまるで鳴り響くかのようだ。
このままでは吐く。きっと吐いてしまう。その方がこの兄ちゃんにとって不幸なことに違いない。僕はこの店のために席を立つのだ。半分以上残した丼で兄ちゃんを傷つかせてしまうより、目の前で吐かれた方がきっと深く傷つくに違いない。そうだそうだそうだと自分に言い聞かせる。もう、箸は麺を1本でさえ運ばなくなっていた。
僕は男だ。勇気を振り絞れ!! 兄ちゃんの顔を見ずに丼をカウンターに置き、うつむいたままで幸せそうにすする客でごった返す店を出たのだった。ごめんなさい、兄ちゃん。ごめんなさい、母上様。もう二度と過ちは繰り返さない。そう心に誓った昼下がりだった。
5年位前だったか、パンチョの大盛りナポ初体験の時がそんな感じでした。
(パンチョ ←伊藤一雄さんではありませんよ!)
あの時は大盛り券で並との中間のハーフ(※某店にはありました)を注文し、無事完食。
我が家も残さず食べなさい!家庭でしたので、ライダースナックもドブに捨てたりはせず、毎回有難く食べてました。
パンチョは行きたい行きたいと思いながら行けてません。普通にします!!
「食べ物は絶対に残しちゃダメ」・・僕もこの教えを頑なに守っている一人です。
体に悪いとわかりつつ、ラーメンのスープを飲み干す。
旅館やホテルでも出されたものは全て完食。パセリさえ残さない!
カミさんが子供達に「食べれなかったら残していいよ」というと
「食べれない思うのなら取り箸で取り皿に分けて食べなさい」と僕は言う。
カミさんには「少なめにして、食べたかったらお代りするようにしなさい」と
注意を促す。食べ物は全て命だ。命をいただくんだ。食べ残して捨てられたら
僕らのために命を捧げた動物や植物に申し訳が立たない。
美味かろうが不味かろうが食べれるだけまし!明治生まれのバァさんの教えを
愚直に守る僕です^^
ジョニー藤好さん、さすがです。僕の今回の出来事は書いたとおりで猛省しております(泣)。
さすがに増しは出来ないけど二郎系たまに食べたくなります(^_^)
kazoo!さん、コメントありがとうございます。そうですよね。あの日思いました。僕の舌が狂っているんです(泣)。