東京で生まれ、東京で育った。こう書くとなんだか誇っているように取られてしまうかもしれないが、ガキの頃は東京がいい所なんて全く思っていなかった。川は臭いし街はゴミだらけ、星は見えないし空は汚い。親戚が住む、田畑に囲まれた埼玉県岩槻の方がずっと素敵に感じていた。ましてや僕の街は荒川区で、ナウでヤング街とは程遠い。同じ下町でも浅草や上野といったスターも不在で、不良が多いだけの汚い街が荒川区だった。
そんな僕でも今日、10月1日の東京は好きだった。都民の日という祭日だったのだ。バカなガキはこれが都民だけの特権だと思っていたから、この日は強く感謝したものだ。9月に敬老の日、秋分の日があり、後には体育の日も控えている。夏休みが終わってしまった心の傷を、これらが埋めてくれたのだ。
大人になった今も10月1日になるとあの日を思い出してしまう。どこへ行っても空いている特別な祭日を、俺たちは満喫した。ご存知だろうが、今日は都民にさまざまなサービスがある。と言っても、忙しい俺たちにはそれを利用する時間はないかもしれないが、たまたま有給だという方は無料の施設周りなんていかがだろう。我が社のある浜離宮も無料だからゆったりと散策して増上寺で手を合わせたら、布屋更科でビールを呑みながら天ぷらをつまんでそばで締める。上野動物園で子供返りして一杯ひっかけたら『浅草秘密基地』へ突入だ。なんて書いててうらやましくなっちまったい。
ガキの頃はよく思っていなかった東京だが、今は大好きだ。川の臭いは取れたし街にゴミはない。昔よりは星はグーンと良く見えるようになり、空は青い。そんな東京は今オリンピックに向かって大改修中である。どんな東京になるだろう。そして、未来も人に愛される東京であって欲しいと願う都民の日だ。