「認知症」とひと口に言っても、人によってその症状はさまざまなものがあるそうです。記憶障害や見当識障害と言われる「中核症状」は脳の神経細胞が壊れることによって、直接起こる症状で、直前に起きたことを忘れたり時間や場所がわからなくなるなどが顕著な例です。今までできていたこと、例えばボタンをとめるなどの動作ができない失行、道具の使い方がわからなくなる失認、ものの名前がわからなくなる失語なども中核症状のひとつです。
もう一方で、人との関わりのなかで起きてくる「BPSD」という症状があります。「Behavioral and Psychological Symptoms of Dementia」の頭文字で、認知症の行動と心理症状を表わす英語からその名称がつけられています。具体的には、暴言や暴力、興奮、抑うつ、不眠、昼夜逆転、幻覚、妄想、せん妄、徘徊、もの取られ妄想、弄便、失禁などです。置かれている環境や、人間関係、性格などが絡み合って起きるため、その症状は人によって現れ方が異なるという特徴があるそうです。そして、前述の中核症状よりも深刻なのはBPSDのほうだと言われています。それは、介護する側の精神的な負担がかなり大きいということが容易に想像できるからではないでしょうか。
今は大丈夫でも、予防は転ばぬ先の杖
昭和40年男の年齢では、自分のことより、親世代のことで直面しているという人も少なからずいると思いますが、仮にそんな心配がない人でも、自分自身のことを含め、予防できるものならできる限りのことはしておきたいと思いはじめている人もいることでしょう。というのも、実は昭和37年女の私も、最近は物忘れ、落とし物などなど気になることが増えてきたこともあって、認知症にならない(なっていたとしたら進行を遅らせる)方法はないものかと真剣に考え始めてきたからです。本誌の8月号(vol.50)の健康講座でも取り上げた「もの忘れ」ですが、記事内では、若年性アルツハイマーなどは高齢者の場合より進行が速いなど、本当に気になることがたくさん書かれていますので、今一度読み返してみました。まさか自分が…ということにならないとも限らない、そんな一抹の不安を感じることもある今日この頃ですが、予防が難しいとされるこの「認知症」に少しでも立ち向かうべく、調べてみたところ大変興味深い話がありました!
歩きながら頭のトレーニングを行う「マルチタスク」、過去の記憶を引き出す「回想療法」、「音楽療法」など、いろいろな予防法が掲げられていますが、近年、「嗅覚」を刺激することが軽度から中程度のアルツハイマー型認知症には改善の効果がみられるということも言われているようです。そもそもの発端が、アルツハイマー型の認知症患者は「腐ったものの臭いを気にしない」という症状から、認知症と嗅覚に何か関係性があるのでは?ということで研究が進められたのだそうです。そして、今ではおなじみの「アロマテラピー」に着目し、日々の生活のなかにアロマをとり入れることで、その効果を導きだしていったということです。
意外と手軽なアロマテラピー
アロマといえば、リラックス効果が筆頭にあげられるので、ストレス解消や安眠などにその力を発揮してくれるというのはご存じの方も多いでしょう。このアロマ、単なる芳香剤とは違って、「天然の成分」で作られているところが重要なポイント! 世に「いい香り」と称するものは数々あれど、天然のエッセンシャルオイルというのは希少なので、値段もそれなりに高いのですが、だからこその効果と心得てぜひ試してみてはいかがでしょうか。デュフューザータイプでアロマオイルに木製のスティックを差したものなどが手軽で、手間もかからずおすすめです。日中用(ローズマリー、レモンなど)と夜用(ラベンダー、スィートオレンジなど)で用いる香りも作用も少しづつ違いがあるので、自分に合ったものを見つけるのも楽しいかもしれません。「時をかける少女」でおなじみのラベンダーのエッセンシャルオイルはリラックス効果をもたらすと言われる代表的なもののひとつです。
香りというのは不思議なもので、何気ない香りで突然昔のことを思い出したりすることはありませんか?夏の夕立の後のあのなんとなく湿っぽいような香りは、なぜか子供の頃の夕暮れ迫る校庭の景色を思い出したりします。人それぞれに思い出につながる香りというのがきっとあるのではないでしょうか。そういうことを考えると、やはり嗅覚と脳機能との関係は深いと思わざるを得ません。視覚や聴覚と同じく身を守るためにも大切な役割を果たしている嗅覚。最近鈍くなってきたのでは?と感じたら、ぜひアロマなどでよい刺激を与えて、回復を試みてみましょう。
嗅覚の衰えは、もしかしたら「認知症」の危険信号かもしれません。心地よい香りでリラックスすれば、ストレスや不安もも軽減されて、ぐっすり眠れるなどいいことがたくさん! ネットなどで手軽に手に入れることができるものもありますから、ぜひアロマ生活、始めてみませんか!
※注意:薬ではないので、通常副作用などは起きないと言われていますが、エッセンシャルオイルは高濃度のため、極度のアレルギー体質の方などは注意が必要な場合もありますので、心配な方は主治医などに相談のうえご使用くださいませ。