昭和40年に生まれた、いわばタメ年の商品やサービスを我々の思い出と共に紹介する連載記事である。今回は、カレーうどんを身近にしてくれた「マルちゃん たぬきカレーうどん」だ。
甘辛い汁が身体をポカポカに温めてくれた
子供たちに好きな食事のメニューを聞けば、今も昔も必ず上位に来るのがカレーとハンバーグではないだろうか。もちろん昭和40年男が子供の頃も同じだったが、不思議なことに同じカレーでも、カレーうどんとなると暖かい時季に食べた記憶がなく、むしろそのほとんどが冬場だった。多分、カレーライスとも違うとろみのある汁のためだろう。その分、冷えきった身体も芯から温めてくれる。
だが、なかなか自分で作るような機会はなく、どちらかといえば蕎麦店で頼むか、自宅なら即席麺で味わうことが多いように思う。
即席麺でなじみ深いのは、東洋水産の即席カレーうどん「マルちゃん カレーうどん 甘口」だ。実はこの商品の先祖・元祖にあたる商品こそ、昭和40年に登場した「マルちゃん たぬきカレーうどん」なのである。1970年にパッケージが現在に近いものに変わり、名称も「マルちゃん カレーうどん 甘口」となり、ロングセラーとなっている。
当時は、58年に日清食品から発売された「チキンラーメン」を皮切りに、即席麺が各社から発売されるようになっていた。そして麺自体に味を付けるのではなく、スープを別添する即席袋麺も登場して、多様な味が実現できるようになっていた。そこで東洋水産では、新しい味付けとしてカレー味を登場させたのだ。
同社はラーメンだけではなく、うどん・そばの和風麺にも早くから進出していて、63年には「たぬきそば」を発売。そして、75年には自社加工のだしを使用した初のカップ入り即席きつねうどんを登場させ、それが78年発売の「赤いきつねうどん」につながっていった。この「赤いきつねうどん」と、そばの「緑のたぬき天そば」は、地域の好みに合わせてだしの味付けを変えていることが広く知られているが、「マルちゃん カレーうどん 甘口」は地域差を設けず、子供から大人まで誰もが食べられ、食べ飽きることもないオーソドックスな味を追求しているという。確かに、カレーうどんは小さな子供も大人も一緒においしく食べられるメニューだ。甘辛い汁をひと口飲み込むとノドを少し刺激する汁が胃に落ち、カレーが絡んだ平打ち麺のうどんをすすり、また汁を飲み込む。これを繰り返すうちに訪れる、胃の壁という壁にとろみのある汁が張り付いていくようなあの感覚はカレーうどんならでは。
即席麺とひと口に言っても、あらゆる麺、あらゆる味が存在している現在。しかし、寒さが増すと共に袋を開けたくなり、あの甘辛い汁を、うどんとともに飲み干したくなるのは、今も昔も変わりがない。
マルちゃんマークは62年登場
※東洋水産商品の正式名は「マルちゃん」が付く
協力:東洋水産
【『昭和40年男』vol.41(2017年2月号)掲載】
文:舘谷 徹 / 昭和40年7月、埼玉県生まれのライター・脚本家。広報誌やWeb記事、ドラマやアニメの脚本を執筆。プラネタリウムで活動する市民グループにも参加中