株式会社大修館書店より、「大漢和辞典デジタル版」が11月28日(水)に発売される。発売に先立ち、大修館書店創業100周年を迎える9月10日(月)より、予約の受付を開始する。
日本人の教養と生活を支えた“諸橋大漢和”
『大漢和辞典』は、古今の辞書・文献を渉猟して、親字5万字、熟語50万語を収録した漢和辞典。大修館書店の創業者である鈴木一平が発案し、漢学者である諸橋轍次に編纂を依頼。1927年に編纂が開始され、1943年に巻1が発行された。1945年2月、巻2の発行寸前戦火にあい、全巻の組置き原版を焼失したが、戦後、保管していた校正刷をもとに復刊をはかり、写真植字による新しい方法によって、1955年から1960年にかけて初版全13巻の発行を完了した。その後修訂作業が進められて、1986年に修訂版の発行を完結。1990年には『語彙索引』が、2000年には『補巻』が刊行され、全15巻となった。
発刊以来、大学や研究機関での研究はもちろん、寺社での戒名選定や祝詞作成など、さまざまな場で活用されるとともに、日本の文字コードの策定にあたって、文字を同定するための参考図書として大きな影響を与えた、日本を代表する大辞典だ。
この膨大な収録数を誇る『大漢和辞典』をPC1台に収められるのが、「大漢和辞典デジタル版」。書籍では巻数にして13巻(索引2巻を除く)、ページ数にして1万ページを優に超える情報を、PC上で簡単に検索することができるという。
「大漢和辞典デジタル版」の特長
1.引きやすい検索機能
さまざまな検索方法で、すばやく検索ができます。 *検索対象は親字のみです。
● 検索対象は『大漢和辞典』の全親字(51,110字)。
● 漢字/大漢和番号/ユニコードの直接検索。
● 部首/総画/音訓/部品の複合検索。
●「部品検索」はデジタル版用として独自に開発。部首・総画・音訓と組み合わせて検索できます。
2.読みやすいページビューア
本文情報は画像で用意。使い勝手のよいビューアで閲覧できます。
● 巻1〜12、補巻の本文に加え、索引巻「補遺」も収録。
● 1ページ単位で表示され、書籍版の約4倍まで拡大できます。
● ルーペ機能を使えば字体・字形の細かな違いまで識別可能。
● マルチウィンドウ対応で、複数ページを並べて見比べられます。
3.調べやすいジャンプ機能
どの巻にも、どのページにも、すばやく移動可能です。
● ページビューアには、ジャンプ機能を搭載。
1ページ単位の移動はもちろんのこと、5ページ単位で前後にジャンプできます。
●「……に通ず」といった本文中の参照字は、大漢和番号を入力してジャンプできます。
4.使いやすいカスタマイズ機能
後で調べたい、調べたところにメモを残したい、……こういったご要望に応える機能が充実しています。
● 親字を登録できる「お気に入り」機能で、よく引く漢字をいつでも呼び出せます。
● 調べたページにメモを付けて登録できる「付箋」機能も搭載。
大漢和辞典デジタル版 概要
発売日 :2018年11月28日
予約方法 :9月10日より、特設サイトのほか、FAX・郵便でも受付
書店でも予約可能
販売価格 :通常価格 13万円(+税)
※2019年3月末まで発売記念特価として10万円(+税)
商品形態 :USBメモリ1本・化粧函入り
商品仕様 :Windows7以降対応
USBメモリからPCのHD/SSDへインストール
※HDまたはSSDに20GB以上の空き容量が必要
※USB1本につきPC1台のみインストール可能
特設サイト:https://www.taishukan.co.jp/daikanwa_digital/
さまざまな苦労の末に生まれた『大漢和辞典』とは
『大漢和辞典』は5万の親字を収録していますが、戦前、活字で使われる漢字は8,000字程度しか存在しませんでした。大修館書店の創業者・鈴木一平は活字職人を数十名を使い、何十万もの活字を新たに彫る作業から始めて、苦労の末、1943年9月10日に巻1を発行しました。しかし、巻2の刊行を目指す最中、東京が空襲を受け、組み置きの原版等一切を焼失。約20年間心血を注いだものが失われてしまいました。
ただ、著者である諸橋轍次は、いざという時のことを考え校正刷を3ヶ所に分けて疎開させており、戦後になってこの校正刷によって事業を再開することができたのです。
また、鈴木一平は、自分一代で事業が終わらない可能性があることを見越して、子どもたちの人生をも“大漢和”に捧げることを決意。医師や東大を目指していた息子たちの進路を変えて、“大漢和”刊行事業に携わらせ、一家で“大漢和”のために尽くすことになりました。
構想から完結まで数々の苦難を乗り越え、今の『大漢和辞典』があるのです。
推薦のコメント *五十音順・敬称略
いくつかの漢和辞典が電子機器で使えるようになり、漢字をめぐる学習と研究環境が格段に便利になるにつれて、「でも大漢和だけは無理だろうなぁ」という、あきらめに近い声が随所から起こっていた。「待望」という語くらいでは表現できない快挙である。
阿辻哲次(京都大学名誉教授)
「諸橋大漢和」は黄金です。きわめて価値高く、これなくして東洋文化を、いや、文化そのものを語ることはできません。しかし黄金です。きわめて重く、机の上に広げるのも楽ではありません。それが一挙に解決されるデジタル時代がやってきました。新しい検索機能は、さらに黄金の価値を高めています‼︎
河野元昭(静嘉堂文庫文庫長)
漢和辞典、漢字字典はあまた編纂されてきたが、今なお『大漢和辞典』にしかない漢字や字義、熟語や解釈などが随所で見付かる。1万頁を優に超える偉容がそのままUSB媒体に収められ、しかも様々な検索まで可能となった。この待望の電子化により、新たな価値と魅力まで見出されるに違いない。
笹原宏之(早稲田大学教授)
パソコンで使いやすいよう工夫が凝らされたデジタル版によって、諸橋轍次先生の偉業の重みが、時代を超えてますます伝わってくる。漢字を調べるのももちろん楽しいが、地の色と文字の色をさまざまに選べる機能が目に優しくとってもおしゃれ。あれこれ色を変えては、うっとりと漢字に見入ってしまいます。
三浦しをん(作家)
毎年、新語・流行語が続々と登場し、この数十年で日本語も随分と変わってきたのではないかと感じる。生まれては消えていくいわゆる死語なるものも数えきれないほどだ。ワープロやPCが急速に普及したことで、正しい漢字、正しい熟語が書けない、使えない、間違った解釈がされているということも増えてきたと言われることも多い。そんななか、戦後の混乱を乗り越え、昭和30年から35年にかけて刊行された本辞典は本当に貴重な辞典と言えよう。来年3月までは発売記念特価でお得な価格になっているので、購入を検討している方はお早目に!
それは大層残念なことでしたでしょう…(昭和37年女)
若い頃、持っていたのです。
「本を買うのが俺の仕事だ」ってな勢いで。
時々でしたが、引くのが楽しかった。
幅広い問題意識と、深い突っ込みにあふれている。
4千円台の辞書では出てこない、宇宙のような深み。
でも、いろいろなことがあって手放したのです。
古本屋に、二束三文で。
あの頃にデジタル版があったら、2セット買えました(爆)