昭和40年に生まれた、言わばタメ年の商品やサービスを我々の思い出と共に紹介する連載記事である。今回は、先進的な機能やデザインに憧れたオーディオブランド・テクニクスだ。
クラシック音楽に詳しくなくても、芸術の秋ともなれば、ちょっといい音楽に浸ってみようかなと思ったりする。子供の頃は、ベートーベンの第九でさえ寝入ってしまうほどだったけれど、いい音で聴きたいという欲求だけはあった。
当時、東京・秋葉原の電器店には、プロやハイアマチュア向けのオーディオを扱う店も少なくなかった。聴くだけならタダなので、カセットテープを買いに行ったついでに顔を出していたものだ。そんな店頭で憧れの存在だったのが、テクニクスブランドのオーディオだった。
独創性あるデザインも魅力だった。
テクニクスの歴史は、昭和40年発売のスピーカーシステム『Technics 1』から始まった。テクニクスという名称は、技術に裏打ちされた、すぐれた製品を送り出すという想いからの、「テクノロジー」に基づいた造語だそうだが、製品開発にたずさわった研究員が名前を考えている時に辞書を引いていたところ、技術を意味する「Technic」の次の項目である「Technics」に目が留まり参考にしたという逸話も残る。
第1号製品の『Technics 1』は、密閉型2ウェイ2スピーカーシステムで、コンパクトでありながら高音質を実現したものだった。小さなサイズから生み出される音は、多くの専門家はもちろん、オーディオファンも魅了したという。
ちなみに、この段階でのテクニクスは、ナショナルブランドにおけるスピーカーシステムのシリーズ名であったが、その後、同社製高級オーディオのブランド名となる。その頃を代表する製品のひとつが、1970年発売のターンテーブル『SP‐10』である。世界で初めてダイレクトドライブを採用したことによって、低振動かつ正確な回転、経年変化の防止を実現した画期的なモデルだった。5年後にクォーツ制御になったものは、世界約30ヶ国で3,000台以上が放送局に納入されるほど信頼された。
また、高いデザイン性も特徴であった。特に印象に残っているのが、79年に発売されたレコードプレーヤー『SL‐10』だ。アルミダイキャスト製キャビネットの独特の質感、レコードジャケットと同サイズの、未来感漂う直線的なデザインが実にかっこよく、発売当時どれほど欲しいと思ったことか。
その後、音楽環境が大きく変化していくなかで、テクニクスブランドの製品は、2010年を最後に一旦終息する。しかし近年のアナログレコードの復権や、子供の頃テクニクスを高嶺の花と見ていたまさに昭和40年男世代が再び音響に凝るようになったことにより、14年にテクニクスブランドが復活。高級オーディオシリーズとして数多くの製品が登場している。
我々も、子供の頃に憧れを持ちつつ手が出なかった音響趣味を復活させたっていいだろう。そして、真の芸術の秋を楽しんでみたいと思う。ただ、その前にクラシック音楽の勉強が必要になるかもしれないけれど。
協力:パナソニック
【「昭和40年男」Vol.45(2017年10月号)掲載】
文:舘谷 徹/昭和40年7月、埼玉県生まれのライター・脚本家。広報誌やWeb記事、ドラマやアニメの脚本を執筆。プラネタリウムで活動する市民グループにも参加中
320さま
良いものは本当に長く使えますよね!これからも大切になさってくださいませ♪(昭和37年女)
うちののコンポがTechnics。
CDプレーヤーはCDトレイが動かなくなりましたが、1987年製でも現役です。
パソコンにPreSonusのオーディオインターフェースをアンプに繋いでます。