「今日より夏休みじゃーっ」と、子供たちはきっと浮かれていることだろう。うらやましいですなあ。夏休みのスタートには地域差があるが、僕にとっては小中高と昨日が終業式で、今日より8月31日までが人生最大の喜びを得る夏休みとなる。たっぷりの時間が、ひと夏の経験を多く連れて来てくれた。
あの頃はギンギラ太陽に立ち向かうヤツばかりだった。シナロケは『ピンナップ・ベイビー・ブルース』で“誰もがみんな小麦色”と歌い、松田聖子さんはショートカットで“わたし〜小麦色なの”と迫ってきた。夏は変身の季節だったのだ。新学期の女の子たちが、こんがり焼けて目がくっきりはっきりしたのを見てはキュンキュンするバカ者だった。男子だって負けちゃいない。夏の太陽に挑んだ証を新学期に誇らしげに披露したのだった。
そんな俺たちをガッチリとサポートしてくれたのがコパトーンだ。あの独特な香りを嗅ぐだけで当時へと時間旅行が楽しめることだろう。当時だってあの香りをかげば興奮し、火照った肌を冷やすシーブリーズの香りとともになんともいい気分にさせてくれた。シーナさん風に言えば、誰もがみんなシーブリーズだ。
いつからか美白の時代が到来して今では紫外線は女の子の敵である。オゾン層だのめんどくさいこともあるから仕方なしで、小麦色の女の子は街でほとんど見かけない。俺たちが多感だったハイティーンの頃、多くの曲を彩った単語がひとつ消えてしまったことになる。そしてコパトーンは日焼けオイルから日焼け止めへと変わったのだ。電車の窓に貼られた美白なお姉さんを見て、ちょっぴりセンチメンタルジャーニーなおっさんだったのさ。