歌丸さんが亡くなった。昨日、まさに締め切りの真っ只中にその悲しい知らせが入った。落語の知識はそれほどでないものの寄席には幾度となく足を運んでいて、歌丸さんはいつか聞いてみたい方だった。いつかってのはこの歳になると遠くを眺めているばかりで、すぐに行動を起こさないことを後悔することばかりが増えてしまう。
落語家さんたちを身近にしてくれているのは『笑点』の存在であり、歌丸さんとの接点やその生き様を知ったのもこの番組からである。ガキの頃からずっと親しんできた俺たちで、あのテーマ曲は今も昔も日曜日の夕暮れ時を連れてくる。司会、および番組を降板するまでの歌丸さんのさばきや楽太郎(圓楽)さんとの掛け合いはいつも笑わせてくれた。日曜日はイベントばかりやっていて見られる機会はほとんどない僕だが、日曜日の5時半に時間が取れれば必ずビールをセットして楽しむことにしている。あの番組にはほのぼのとした空気が漂い、心がすっきりとする。
『笑点』になぜこんなに魅かれるのか? ずっと変わらないからだ。昭和の香りがいまだにしっかりと残っていて、それが受け継がれてきた。これまでも番組の顔だった方が何人も亡くなっている。今回もまた悲しい別れとなり、でもそれでも意志を受け継ぎ番組は続いていく。歌丸さんはそれを見守っていくことだろう。
ここ近年は、歌丸さんの仕事に対する執念を感じさせていただくことが多かった。生涯現役にこだわる鬼の姿に尊敬の念を抱きながら、自分の未来が少しでも近づけるようにと重ねたりしていた。だから一度生で聴きたかったのに、本当に後悔している。
歌丸さん、ゆっくりとお休みください。ありがとうございました。